「小説を書くのが小さい頃からの夢だった」と語るのは大城道則氏。古代エジプト史を専門とする考古学者で、駒澤大学文学部の人気教授だ。

大城道則(おおしろ・みちのり)
大城道則(おおしろ・みちのり)
1968年、兵庫県出身。駒澤大学文学部歴史学科教授。博士(文学)。関西大学大学院博士課程、バーミンガム大学大学院エジプト学専攻修了。

本書は、鳥取県庁職員が砂丘にピラミッドを建設することで観光客を呼び込もうと奔走する物語。作中には大城氏の専門的知見をベースにした、大胆なシミュレーションが盛り込まれている。

「研究者はエビデンスのないことは言えません。最初はアカデミズムの思考から抜け出せず、研究書っぽくなってしまった。小説への挑戦は、簡単ではありませんでしたね」

そこで大城氏は、研究者としての“足かせ”を外すことにした。一歩踏み込んだ仮説を登場人物に言わせることで、ストーリーが生き生きと走り出したという。

当時の人々が巨大なピラミッドをつくった方法はいまだに謎のままだ。坂道をつくって石を運んだという説が有名だが、大城氏は古代において最大の動力であった「水」も活用されたはずだと考えている。王が庶民のための公共事業としてピラミッド建設を行ったという説にも否定的だ。

『現代にピラミッドを建設しようとしたら、超大変だった話』ポプラ社/1000円+税
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「当時のエジプトは、種をまけば大豊作。私なら農業以外の仕事なんかしません。あれほど巨大なものは、信仰がなければつくれませんよ」

だが、どの「説」も完璧な証明は不可能だ。

「有力な仮説を立て、周囲を説得できれば優秀な考古学者だと認められます。それでも、全員に信じてもらうことはできない。納得してくれる人は、よくて5割くらいでしょうか」

考古学は、実験で自らの正しさを証明できる学問とはまったく違う。「古代研究には答えがない。そこが面白いところ」だと大城氏は言う。

「正解がないから、アイデアや想像力を生かす余地がある。科学的に証明をするにも、まずはアイデアがないと始まりませんからね」

(インタビュー・文=神前梨理子(本誌編集部) 撮影=石橋素幸)

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