57歳にして、人生で一番の大ケガをした。利き手である右手親指の靭帯断裂。手術を受け、3カ月はペンも持てない。シニアでもできる運動をと考え、柔術を始めて1年足らずの出来事だった。

本田直之(ほんだ・なおゆき)
本田直之(ほんだ・なおゆき)●レバレッジコンサルティング代表。シティバンクなどを経てバックスグループに経営参画し、JASDAQ上場に導く。現在はベンチャー企業の社外取締役などを兼務する。著書78冊累計300万部を突破。

「薬指のここ、曲がっているでしょ。これだけじゃなくて足指の骨折、両足の肉離れ、肩鎖関節も損傷しました。人生57年分以上のケガをたった1年でしてしまいました」

サーフィンやトライアスロンが日課の本田さんにとって、パワーは30代の頃と比べても遜色ない。では何が問題だったのか?

折しも別の本の執筆中に断裂手術が重なり、入院中に気づいた。関節や腱、靭帯は消耗品。それなのに若い頃のやり方のまま突っ込んだから壊れたのだ、と。

その問いの射程は「人生後半をどう生きるか」にまで広がっていく。日本人男性の健康寿命は72歳といわれる。58歳の自分なら夏はあと14回しか来ない。人生の戦い方を変えるべき時に来ている――原稿は大幅に書き直された。

本書が示す戦略の核心は、意外にも「恥をかく」ことにある。年齢を重ねるとだれも注意してくれなくなる。「いいですね」の忖度に身を委ねていたら、気づけば体も頭も動かなくなってしまう。だから本田さんは常に新しいことを始め、初心者として恥をかく場所を求め続けている。

柔術の道場は、あえて知り合いが一人もいないところを選んだ。友達のいる道場なら楽だが、それでは意味がない。

「料理も同じです。実は55歳までほぼ作ったことがなかったんですが、一念発起して料理教室にも通い始めました」

プロ同然の腕前の受講者が並ぶなか、作ったことのない筑前煮を持っていった。鶏肉が硬い、味が濃い、煮崩れしている……しまいには「安い居酒屋の料理みたいだね」

それでも、鍛えてもらっていますからと笑う。

(インタビュー・文=内藤 慧(本誌編集部) 撮影=遠藤素子)

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