大学入学のために鹿児島から出てきて、大阪に知り合いはゼロ。空手はもうやめるつもりでした。それが入学3日目、暇を持て余して自分から道場をのぞいたのが運の尽き。田辺先輩に見つかり、「君は経験者だろう」と昼飯まで奢られて、まんまと入部することに。「きつい夜練は試合前だけ」は方便でしたよね。試合、毎月あるんですから。

田辺先輩は、誰よりも稽古を続ける人でした。握り拳の凹凸が次第になくなるまで巻藁を突き、拳立て伏せを重ねる。板張りの道場に空調はなく、夏は地獄のように暑い。防具もろくにない時代で怪我人も続出し、10人入れば半分がやめていく。それだけ厳しい環境で、なお空手を愛し続けていました。田辺先輩の継続力は空手にとどまりません。社会人になってから仕事のために英語と中国語を身につけたと聞き、さすが先輩だと感心しました。私が読書やランニング、毎日1時間の英語学習を続けられているのは先輩を鑑としているからです。

大阪・吹田市の千秀館道場にて。
大阪・吹田市の千秀館道場にて。

田辺先輩は30年経ったいま、高校生の指導を行いつつ大学のOB会を取りまとめています。「空手で日本一より、社会で活躍できるように」が先輩のお考え。コーチとして、そして社会の先輩として、学生の面倒を見続けています。私も学生時代に遠征費をOB会費で出してもらった身ですから、次は支える番。OB会の手伝い、ぜひともさせてください。株主総会と毎年重なってOB総会に行けないのが心残りですが、いつか必ず顔を出します。(鷲見)

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2026年10月16日号)の一部を再編集したものです。

(構成=佐原希生(本誌編集部) 撮影=加藤 慶)

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