新作の舞台はゴルフですか。銀行小説に始まり、伝記、マラソン、ゴルフと、ご自身の多様な趣味を入り口に、瞬く間に作品を書き上げてしまうところには毎回、驚かされます。

東京・神保町の三省堂書店にて。江上さんの新作を片手に。
東京・神保町の三省堂書店にて。江上さんの新作を片手に。

初めてお会いしたのは、第一勧業銀行(現みずほ銀行)の広報室でした。反社会的勢力への利益供与が明るみに出た総会屋事件が起きると、私は彼のもとで対応に奔走することになります。江上さんは直属の上司となる広報部次長でしたが、難しい局面でも対応方針を次々にまとめあげました。「上の人間にも鈴をつけないとダメだ」と正面から言い切る断固とした姿は、隣で聞いている私の肝が冷えるほど。危機のときは誰もが江上さんを頼っていた。そのブレない姿勢は、多くの人に強い印象を残していましたね。

在職中に『非情銀行』を執筆し、作家としてデビューした江上さん。作品には、保身や出世欲といった人間のズルさが、容赦なく書き込まれています。ただ、その渦中には必ず、これでいいのかと信念を持って踏みとどまる人物がいる。想像だけで書けるものではありません。長年にわたる経験の裏打ちがあるから、手触りがある「生き様」が描けるのだと思います。

(構成=佐原希生(本誌編集部) 撮影=市来朋久)
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