新作の舞台はゴルフですか。銀行小説に始まり、伝記、マラソン、ゴルフと、ご自身の多様な趣味を入り口に、瞬く間に作品を書き上げてしまうところには毎回、驚かされます。
初めてお会いしたのは、第一勧業銀行(現みずほ銀行)の広報室でした。反社会的勢力への利益供与が明るみに出た総会屋事件が起きると、私は彼のもとで対応に奔走することになります。江上さんは直属の上司となる広報部次長でしたが、難しい局面でも対応方針を次々にまとめあげました。「上の人間にも鈴をつけないとダメだ」と正面から言い切る断固とした姿は、隣で聞いている私の肝が冷えるほど。危機のときは誰もが江上さんを頼っていた。そのブレない姿勢は、多くの人に強い印象を残していましたね。
在職中に『非情銀行』を執筆し、作家としてデビューした江上さん。作品には、保身や出世欲といった人間のズルさが、容赦なく書き込まれています。ただ、その渦中には必ず、これでいいのかと信念を持って踏みとどまる人物がいる。想像だけで書けるものではありません。長年にわたる経験の裏打ちがあるから、手触りがある「生き様」が描けるのだと思います。
その後、私は西武グループを経て、商工中金へ移ります。仕事に悩んだときは、いつも江上さんに相談してきました。自分は今の持ち場で、正しい信念を貫けているか。還暦を過ぎてもなお、自らを問い直す機会を与えてもらっています。(関根)
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2026年10月2日号)の一部を再編集したものです。
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(構成=佐原希生(本誌編集部) 撮影=市来朋久)
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