日本は年間の死者が160万人を超える“多死社会”に突入している。私たちは“死”とどう向き合えばいいのか。『定年後、その後』が話題の楠木新さんは「70代の『定年後、その後』世代になると、次第に死について言及する人が増え始める。そこで、死を疑似体験できるワークショップに参加してみたところ興味深いことが見えてきた」という――。(第1回/全3回)
91歳の作家が語る「死の恐怖」
近年、「老い」や「死」との向き合い方が改めて問われている。
先日寄稿した『中央公論』の「老いの流儀」という特集で、学生時代から愛読している筒井康隆氏のインタビューを目にした。91歳になった今も執筆を続ける筒井氏が「死の恐怖を乗り越えた体験」を語る姿に触れ、老いと死は切り離せない表裏一体のものだ、と痛感した。
ちょうどそんな折に受け取ったのが、「死」を疑似体験できるというインパクトのあるワークショップへの案内だった。
死に向き合うことで、私たちは何を思い出し、日々の生をどう捉え直すことができるのか。このワークショップの体験から、私たちが「今、生きている意味」をあらためて考えてみたい。
擬似的な「死」を体験し、生を見つめる
私はこの2年あまり、ミドルシニア世代のキャリア形成について検討する楠木ゼミを実施している。
2026年8月1日にゼミのOBを対象に、メンバーである人材育成・組織開発の専門家である渋谷浩幸さんが行った「いっぺん死んでみる⁉ ワークショップ」に参加した。
このワークショップは、渋谷氏が一般社団法人エデンの森(上原暢子医師)から正式にライセンスを受けた体験型プログラムである。参加者は7人だった。
目的はきわめて明快だ。擬似的な「死」のプロセスを体験することを通じて、自分にとって本当に価値のある存在や本質的な感情を再確認し、今後の人生を「より良く生きる」ための内省(リフレクション)を得るというものである。



