AIの登場で、誰でも文章が整い、資料もスピーディにまとまり、提案書もすぐ形になる時代になった。だから「今後“仕事ができる人”の定義が変わります」と、『AIに心を預けて大丈夫か 相談・恋愛・ビジネス・教育から見えてきた人間の未来』(Hanada新書)を出版した心療内科医・海原純子氏が指摘する。海原氏に、AI時代において「ビジネスで生き残れる人の特徴」を聞いた。

約500人の働く世代からの回答

「これまで『仕事ができる』と言われてきた人ほど、今後生き残ることが難しくなるかもしれない」

海原純子、ラスカウスキー照美『AIに心を預けて大丈夫か 相談・恋愛・ビジネス・教育から見えてきた人間の未来』(Hanada新書)
海原純子、ラスカウスキー照美『AIに心を預けて大丈夫か 相談・恋愛・ビジネス・教育から見えてきた人間の未来』(Hanada新書)

と、心療内科医・海原純子氏が述べる。海原氏は産業医として数多くの企業に関わってきたが、近年面談の場で「AIはこう言っている」「AIに相談すると……」などと、「AIが示す答え」を口にする人が増えていると感じていた。

そんな折、米国在住の友人で、情報テクノロジーと企業ガバナンスの実務に長く関わってきた専門家・ラスカウスキー氏から「このままでは人の未来が危ない」と指摘された。危機感を共有し、国内外の膨大な文献を調べ、アンケート調査で約500人の働く世代からの回答を分析。

その成果を新著『AIに心を預けて大丈夫か 相談・恋愛・ビジネス・教育から見えてきた人間の未来』(Hanada新書)として出版した。ちなみに先のラスカウスキー氏との共著でもある。

「効率化というより、思考の外注」

海原氏がAI時代のビジネス現場について、こう説明する。

「現代ではスピード感が重視されるでしょう。企画書でも文章でもぱっと書くことが要求される。AIが登場するまでは自らの力でそれらをこなして仕事ができていた人が、AIの登場によって、さらにスピード感を高め、ブラッシュアップしようとAIに作業を丸投げしてしまう傾向がみられるのです。賢い人、仕事ができる人ほど、AIを使いこなす能力があると自信を持ち、AIに全てを任せてしまうことが少なくありません」

AIは速く答える。だからこそ、人は速く決めてしまう。AIを使ってすぐに報告書や企画書を整えて提出する人は一見すると優秀だが、「長期的には判断して決断する力や、客観的に物事を見る力が衰える可能性が高い」と、海原氏は推測する。「AIに丸投げして、AIの解答を丸写ししている人は、『考えた結果』ではなく『整った出力』を提出しているにすぎません。それは効率化というより、思考の外注です。次第に思考の退化が起きていくでしょう。実際に以前は優秀だった人が、AIに丸投げすることを繰り返し、仕事能力が低下してしまった事例が数多くあります」