個性が消え、インパクトがない
なんでもAI任せにするビジネスパーソンは「綺麗に整えられた企画書」をよく提出するのだという。綺麗に整えられているなら、問題ないのではないだろうか?
「いえ、ビジュアル的にはすごく綺麗なのですが、読み手が最も知りたいであろうことが書かれていないのです」と海原氏。
「本質が、背骨が抜けてしまっていると言いますか……。そしてAIに丸投げしているので、本人は企画の内容を把握できていず、プレゼンの場できちんと説明できない。そのため、プレゼンの場で評価を得られない、その仕事を勝ち取れないのです。その仕事だけでなく、複数のプレゼンで不採用になる40代のビジネスパーソンを何人も目にしました」
またAIに丸投げして生まれた成果物は人間的なディテールが失われ、インパクトがないという。
「最近はAIスクールがいくつもあり、その影響もあるのではないでしょうか。成果物の傾向が似ている、個性がないと感じることがよくあります」
どれもこれも似たような成果物では、人の心を掴むようなヒットにはつながらない可能性が高い。
「今後、もっとAIが社会に馴染めば、“AIバレ”もしやすくなります。私自身、ChatGPTが作った文書、企画書などを見抜けるようになりました。変な話ですが、ChatGPTには彼らなりの文体がある。ひとつにはテンポが良すぎるのです。けれどもテンポを良くするためにAIが省力した部分にこそ、実は人間的なディテールの魅力があったりします。ですからオリジナリティが損なわれてしまうことがあるのです」
仕事の空洞化が起きている
最近、海原氏の知人であるベテラン弁護士が「若い弁護士が『AIで調べると、このような結論でした』と平然と述べている」と嘆いていたそうだ。
「AIの進出は専門職に対しても能力パラドックス(業務をAIに任せれば任せるほど、それを使う人間の能力は批判的思考が衰えていくという矛盾)という影響を与えるという報告がされています。ラスカウスキー氏がアメリカで起きている事例を新著(『AIに心を預けて大丈夫か』)に多く記してくれましたが、海外では弁護士が裁判所に提出する意見書にAIが捏造した判決文を記載し、問題となっています。しかしこの場合の問題は、AIにあるのではなく、AIから生成されたものをそのまま使ってしまう人の姿勢にあるのではないでしょうか」
仕事でも勉強でもAIによってわかったつもり、できたつもりになっていく。「本当に考えられているもの」は減り、「仕事の空洞化が起きている」と指摘するのだった。
「今後、“思考を必要としない仕事”は消えていくでしょう。AIが得意とするのは、情報処理(情報を集める、整理する、書き直す、形式を整えるなど)です。ですから単なる情報処理ではない、不確実性の中で方向や方針性を決めたり、何が問題かを考えたり、相手の感情や関係性との関わりで考えたり、というような“人にしかできない仕事”ができる人の価値がアップすると思います」
だからAIに丸投げしているような仕事のやり方ばかりしていれば、思考能力が低下していき、自分の存在価値も揺らいでいくということだ。最終的には自己の問題のみならず、アメリカで今、起きているような訴訟問題に発展することもあるかもしれない。

