この海岸をはじめ、浅野さんは石川県副知事として能登の復旧・復興を担い、被災地へ200回以上足を運んでいます。「現地を見ない限り、よりよい社会はつくれない」。初めて会った頃から変わらない信念です。経済産業省で子供1人1台端末のGIGAスクール構想を進めたときも、起点は現場でした。

石川県能登町の宇出津港にて。
石川県能登町の宇出津港にて。

出会いは東日本大震災直前の2011年2月。経産官僚だった浅野さんは、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院に留学中でした。「日本の政治や行政、地域社会の実態を学ぶ授業がない」と、留学生に生の日本を見せる「ジャパン・スタディ・トリップ」を初めて企画。当時、東京大学公共政策大学院の学生で、同大への交換留学を控えていた私が、日本での受け入れを手伝ったのが始まりです。その後も何度もシンガポールで会い、私の留学生活は浅野さんとともにあったと言っても過言ではありません。

副知事就任は能登半島地震の半年後。同年は豪雨災害も重なりました。被災地の声を聞き、そこから県庁や霞が関を動かしています。私もマッキンゼー、首相官邸、厚生労働省を経て、いまは楽天メディカルのCEOとして、がん治療のひとつ「アルミノックス治療(光免疫療法)」を世界の患者さんへ届けるべく奮闘しています。患者さんによって見える世界はまるで違います。そんなとき浅野さんを思い出すと、目の前の声に真摯に耳を傾けなければと、力が湧いてくるのです。(前田)

(構成=堺 祐希(本誌編集部) 撮影=石川幸史)
【関連記事】
RSテクノロジーズ社長 方永義×新医療領域実装研究会理事・政策研究者 鈴木崇弘「淡々とした生き方に憧れます」
静かさの中にある情熱 アンリツ社長 濱田宏一×珠洲焼作家 篠原 敬
飛行機のロマン Uber Japan代表 山中志郎×日本オーナーパイロット協会副会長 西村博行
2時間ドラマへの眼差し――ベルシステム24ホールディングス社長 梶原浩×阪南大学国際学部教授 大野茂
「スキマ時間にメール返信する人」は仕事がデキない…キーエンスの営業部隊が組織的に実践する"時間ハック"