20万円を支払って得られるのは「年収300万円未満」の資格
生成AIが契約書の下書きを仕上げ、資料をつくり、翻訳までこなす。ホワイトカラーの仕事がAIに喰われはじめた。この先どうなるかわからない。だから手に職をつけよう――。そんな危機感に押されて、資格試験の学校に申し込む人があとを絶たない。
大手資格予備校の行政書士講座で20万円前後、中小企業診断士なら30万円前後。決して安くないお金をみんな不思議なほど迷いなく払う。でもその何十万円に期待しているようなリターンはない。
資格とは、その仕事の入場チケットにすぎない。会場には入れる。でも客を連れてきてはくれない。行政書士の登録者は全国に約5万人。同じ入場チケットを持つ人がこれだけいれば、あとは営業力勝負である。実際、資格を持っていても年収300万円に届かない行政書士は珍しくない。
人気があって取得者の多い資格ほど供給過剰になり、単価は下がっていく。「みんなが欲しがる資格」であること自体が値崩れの理由なのだ。
「資格がなければ働けない」仕事なんてほとんどない
そもそも資格がなければできない仕事のほうが世の中では少数派である。
特に勘違いされている資格の代表が調理師免許だ。飲食店を開くのに調理師免許はいらない。必要なのは保健所の営業許可と食品衛生責任者の資格だけで、後者は1日6時間の講習で取れる。受講料は地域によって異なるが、おおむね1万円ほどだ。調理師免許が必要なのは「調理師」と名乗るときだけである。この事実を知ってか知らずか、高い学費を払って調理師専門学校に通う人がいる。
学ぶ場そのものを否定しているのではない。わたし自身、AIの使い方を教える「ホリエモンAI学校」というスクールの運営に携わっている。ただ、与えているのは稼ぐための技術であって、単なる資格ではない。
「手に職」のつもりで取る資格ほど、AIに喰われやすい。行政書士があつかう書類は1万種類以上あるといわれるが、大半はテンプレート化された定型仕事である。生成AIはこの手の書類の下書きを数秒で仕上げるようになった。「安定」の代名詞だった士業系の資格がAI時代にはいちばん危ういのだ。

