友達の数が多くて、さまざまな会話ができるということは、今の時代においてはとても大切な資産となる。仕事でもプライベートでも、友達がいたほうが人生が前に進んでいくのである。

友達と雑談することは、動物行動学的にいえば「毛づくろい」に相当する。オックスフォード大学のロビン・ダンバー名誉教授が猿の行動を研究した結果、毛づくろいは社会的な絆を深め、何かの際にお互いをアシストする相互扶助のネットワークにつながっていることがわかっている。人間も、また同じ原理で動いている。

友人とカフェで話す人
雑談は、人間にとって「毛づくろい」のようなもの。情報を交換する以上に、相手との心理的な距離を縮め、絆を深める役割がある。

大切な友達関係なのに、「大人になると友達が増えない」という悩みを抱えている人も多い。ベストセラーになった朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』でも、「大人の男性に友達ができない問題」がテーマの一つになっている。女性は大人になっても友達を増やせる人が多いのに、男性がそうでないのは、無駄話(生産的ではない話)をできるかどうかの違いだ、という趣旨の記述があった。

もちろん、仕事では結論から話す、要点を絞る、相手の時間を奪わないなどの気遣いは大切である。一方で、目的のない雑談をする力もまた、人生の充実には必要である。とりわけ、「毛づくろい」をするうえでは、雑談の時間は欠かせない。

そもそも、目的がはっきりした会話をしても、あまり毛づくろいにはならない。仕事の段取りについて細かく打ち合わせをしても、一般的にはその相手との絆が深まることにはならない。

一方で、雑談をすると、明らかに相手との絆が深まる。話題はスポーツでも、最近ヒットした映画やドラマ、あるいは旅行のことでもいい。仕事などの特定の目的と関係なく、楽しく会話した経験が、相手との関係を強めることにつながるのである。

なぜ、雑談が絆を深めることになるのか? 仕事などで、アジェンダがはっきりとしている会話は、相手との毛づくろいが目的ではない。一方で、特に議題をもうけない雑談は、相手との関係性を深めるためにこそ、時間を費やしている。ある意味では、相手を大切な価値のある存在と認めていることになり、だからこそお互いの人柄が印象づけられて、心理的距離も縮まるのである。

女性のほうが雑談が得意な傾向にあるのは、関係性がよりフラットなことが多いからである。男性は、どうしても群れの中のヒエラルキーや順位を気にしてしまって、その中での役割を果たすための会話になることも多い。それに対して、女性は、「女子トーク」や「シスターフッド」といった言葉に象徴されるように、関係性を対等にとらえることが多い。

もちろん、このようなジェンダーによる差は絶対的なものではなく、男性も女性も、お互いに相手の文化の良いところは取り入れたほうが前に進むことができる。「おじさん」が女子トークをしてもいいし、逆に女性が目的のきちっとした会話をする時間も、大切な意味を持つのである。

ところで、雑談が苦手だという方は、どのように話に加わればいいのだろうか? いくつかポイントがあるので、ぜひ参考にして、大いに毛づくろいにつとめてほしい。

(写真=iStock)

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