早期退職するべきか否かを見極めるたった一つの条件
私は、このところ折に触れて、「年齢というのは一つのイデオロギー」だと言っている。もちろん、子供から思春期、大人にかけての成長、学習においては、年齢の意味は大きい。しかし、大人になってからは、生物としての人間、その脳の機能は比較的安定している。
年を重ねればある程度能力が落ちることもある。しかし、その程度は個人によるばらつきを無視できない。加齢に伴う記憶力の低下などは、経験や人間関係、さらには最近では人工知能などのテクノロジーをうまく使えば、補うこともできる。
だから、何歳になったら引き際であるとか、逆に何歳までは働くべきなどは、単なる思い込み、イデオロギーである。実際には個人差も大きいし、それぞれの人がキャリアの中で柔軟に考えていくのが良いと思っている。
私たちは、一般に、年齢という「数字」にとらわれすぎているのかもしれない。「もう30歳だ」「いつの間にか40歳か」「もう50歳だよ」「60代の生き方を考えなければ」などと言っている方に対しては、心の中でいつも思っている。「それ、単なる10進法の区切りですから」と。
生物学的には、10を単位として切りの良い数字で何か劇的な変化が起こるわけではない。科学的には、成熟した大人の年齢による変化は、ほぼ「フラット」で近似して良い。だからこそ、私は、「年齢というのは一つのイデオロギー」にすぎないと言うのである。
実際、現代においては、一人ひとりの身の引き方、引退の仕方には、驚くべき個人差がある。投資家のウォーレン・バフェットさんは2025年末、95歳でバークシャー・ハサウェイのCEOを退任した。一方、フィギュアスケート選手の坂本花織さんは26年5月、26歳で21年間の競技生活を終えた。2人の取り組んできたことの性質が違うので一概に早い・遅いとは決められないが、事実として、この成功者の2人には引退時に69歳の差がある。
やめどきは年齢では決められない。これが、現代における人間の働き方、退き方の真実である。会社員もまた、「定年でやめる」のではなく、「この仕事でまだやりたいことがあるのか」という観点でやめどきを決めても良い時代になっている。
かつては、日本の定年は60歳という印象が強かったが、今では、法改正により65歳までは会社が雇用を続ける義務があり、さらには70歳までは雇用の努力義務が定められている。周囲を見ても、65歳、70歳まで元気で働いている人は珍しくない。逆に、早期退職という形で自ら会社員生活を区切り、新しい環境で活躍する40代、50代もいる。
海外を見ると、アメリカやイギリスのように定年というような年齢によって雇用機会に差をつける制度がない、あるいは禁止されている国や、定年があってもその年齢が日本と同様に上がってきている国が多い。世界の傾向を見ると、定年などある年齢で退職を強制されるのではなく、むしろ年金などの受給開始などをきっかけに、それぞれが自発的に「リタイア」するタイミングを決める流れになってきているようだ。
年齢に関係なく働き続けることには、一人ひとりの生きがいという視点からも重要だけれども、社会全体のシステムとしても大切な意味がある。
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