「政治参加なんて意味がない」……そう考える国民は、独裁者にとって都合がいい。軍や警察を支配し、腐敗したネットワークを築く彼らの実態とは――。

ウクライナへの攻撃を続けるロシア。台湾問題で米国への圧力を強める中国。独裁者に好意的なトランプ大統領の心を見透かすかのような北朝鮮――。

今、世界では民主主義が後退し、専制政治が勢いを増している。

「我々が犯す最大の過ちは、民主主義制度が永遠に続くと思い込むことだ」

こう警鐘を鳴らすのは、ピュリツァー賞受賞・米ジャーナリストで歴史家のアン・アプルボーム氏だ。新刊『独裁国家連盟』(神月謙一・訳、草思社)では、独裁国家の隆盛に間接的に手を貸す西側諸国の実態を暴き出す。

世界はこのまま独裁主義にのみ込まれてしまうのか? ポーランドに本拠を置くアプルボーム氏に聞いた。

――現代の独裁者は公然と残虐行為を行っても恥じる様子がないと、『独裁国家連盟』で指摘していますね。

アン・アプルボーム(Anne Applebaum)
アン・アプルボーム(Anne Applebaum)
米国出身の歴史家、ジャーナリスト。2004年、『グラーグ ソ連集中収容所の歴史』(白水社)でピュリツァー賞受賞。「ワシントン・ポスト」紙の編集委員などを経て、現在は米誌「アトランティック」スタッフライター。

私たちは今、国連などの国際機関が弱体化し、影響力を失った世界に生きている。米中露はもはや国際機関を支持せず、私たちが慣れ親しんできた国際的な権利も重視しない。

また、イランなど、多くの国々が、人権という考え方を拒否している。

中国やロシアでは、独裁者がメディアやSNS、情報システムを支配している。彼らが批判を恐れないのは、国民に情報が届かないからだ。ロシアがウクライナで子どもたちを殺しても、国民はその事実を知りえない。

――20世紀と違い、現代の独裁者らは国際的な連盟を形成しています。

彼らは協力関係を築いている。弾圧の手法や監視技術を学び合い、資金を横領・隠匿する金融スキームを利用し合うためだ。

また、日米など、自由民主主義国家を共通の敵だとみなす。私たちは、「普遍的な権利」「法の支配」「汚職撲滅」といった言葉を使うからだ。

そうした言葉は以前より求心力が薄れたが、依然としてパワフルで、人々の士気を高める。ロシアの反体制派指導者、故アレクセイ・ナワリヌイ氏は、暗殺されるまで、人々の心を揺さぶる運動を展開した。

独裁国家は、こうした言葉が自らの体制を揺るがすことを恐れている。だからこそ、協力関係を築き、自由主義や民主主義といった言葉を使う人々を敵視し、自由民主主義国家の政治体制を弱体化させようとするのだ。

共産主義の中国、ナショナリズムのロシア、神権政治のイラン、そして、北朝鮮。どれも、イデオロギーや指導者は違うが、自由民主主義的な言葉を嫌うという点では同じだ。

(写真=Maciej Zienkiewicz(アプルボーム氏))