健康で長生きするにはどうしたらいいのか。東京都健康長寿医療センター研究部長の村山洋史さんによると、人とのつながりの乏しさは、喫煙や飲酒以上に健康や長生きに関わるという。別の研究では、同居していても一人で食事をする高齢男性は、同居者と食事をする高齢男性より死亡リスクが高かった。さらに、家族との会話や一緒に過ごす時間が乏しい「家庭内孤立」と、精神的健康状態の悪さとの関連も見えてきた。定年後、孤立を防ぐにはどうすればいいのか。フリーライターのざこうじるいさんが聞いた――。
「同居家族がいるから安心」とは限らない
同じ家で妻や子どもと暮らしている。にもかかわらず、家族との会話は1日15分にも満たず、家の中では一人で過ごす――。そんな「家庭内孤立」の状態にある中高年は、決して珍しくないことがわかってきた。
埼玉県和光市の8824人を調査した結果、家族と暮らしている人のうち、20人に1人以上が「家庭内孤立」の状態にあったという。調査をしたのは、東京都健康長寿医療センター研究部長の村山洋史さんらのチームだ。
「家庭内孤立をしている人たちは、独居の人よりも精神的健康状態が悪い結果になりました」
家族と暮らしながら「孤立」しているとは、いったいどういうことなのか。村山さんに、詳しく話を聞いた。
家族と暮らす人の5.8%が「家庭内孤立」
村山さんらは、同居家族との会話が平日、週末・休日ともに1日15分未満で、かつ家の中で一人で過ごすことが多い状態を「家庭内孤立」と定義した。
「平日や予定のある日は仕方ないとして、常に同居家族と会話をしないのは稀なのではないかと考えました。さらに周りの人とディスカッションを重ねる中で、会話が1日に15分に満たないと『あまり喋らなかったな』と感じる人が多いことがわかりました」
一人で過ごす時間については、「家の中にいる時、一人で過ごすことが多いですか」と尋ね、本人の実感に基づいて答えてもらった。村山さんはこれまで、家庭内で孤立している人から「一人ぼっちで家にいます」という言葉をよく聞いていたことから、本人の感覚を重視したという。
したがって、家庭内孤立は、単に家族との会話時間が短いことを指すのではない。会話が15分未満でも、読書や映画を家族と一緒に楽しむなど、「一人である」と感じていない人は、家庭内孤立には当てはまらない。


