自ら望んで一人でいるのであれば、問題ないように思える。しかし村山さんは、一人が好きだと自認している人でも、人との関わりがない状態が続けば、健康に悪影響を及ぼす可能性がある(※5)という。

「人との関わりがない状態って、人間にとってはすごく不自然な状態なんです。『俺は絶対に大丈夫』と思っている人でも、客観的・長期的にみると、良くないことが起こる可能性があります」

40〜64歳で家庭内孤立の状態にある人では、同居者が「配偶者と子ども」というケースが35.1%と最も多かった。男女別の内訳は分析されていないが、村山さんは、妻と子どもには会話がある一方、仕事中心の男性だけが家庭内で孤立している可能性を指摘する。

※5 Sakurai R, Sakurai M, Suzuki H, Fujiwara Y. Preference for solitude paradox: The psychological influence of social isolation despite preference. J Affect Disord. 2024;365:466-473.

家庭外のつながりで孤独感は和らぐ

では、家庭内孤立を防ぐには、どうしたらいいのだろうか。今回の研究では、家庭外で社会活動をしている人ほど、家庭内孤立による孤独感が和らぐことも明らかになったという。

「近所付き合いや友だちなど、家族以外の交友関係が多い人たちは、家庭内孤立の悪い影響が緩和される結果が出たんです。家族関係を変えるのが難しいという人もいると思うので、そういう人たちは、家庭の外で関係性を作っていくっていうのは一つ解決策になると思います」

無理に家庭内での関係を変えようとするのではなく、自分に合ったつながりをつくることが大切だと語る村山さん
筆者撮影
無理に家庭内での関係を変えようとするのではなく、自分に合ったつながりをつくることが大切だと語る村山さん

海外には、孤立しがちな男性が無理なく地域と関われる場もある。欧米を中心に広がる「Men’s Shed(=男性たちの小屋)」では、男性たちがDIYや園芸などの作業を通じて交流する。面と向かって話すのではなく、肩を並べて作業することで、自然なコミュニケーションを促す取り組みだ。

日本でも北海道や熊本に事例があるが、都市部では広い場所を確保しにくい。そこで村山さんらは、東京でも気軽に地域と関われる方法を試している。

地域の仕事が新たな居場所になる

2023年から、東京都板橋区で取り組んできた「ジョブボラ」だ。ジョブボラとは、仕事とボランティアをかけ合わせた造語で、地域の祭りや行事で必要となる作業を、単発・短時間の仕事として募集する仕組みだ。

地域活動は、作業内容や必要な時間がわかりにくく、人間関係への不安もあるため、関心があっても参加しにくい。そこでジョブボラでは、作業内容や時間、条件を具体的に示し、参加への心理的なハードルを下げている。