人とのつながりは寿命を左右する

人のつながりが健康状態に与える影響は、決して小さくない。村山さんによれば、「つながり」は、喫煙や飲酒、運動や肥満などの要素よりも健康や長生きに大きく影響するという。

2010年に発表された研究によれば、飲酒と喫煙による死亡リスクの増加はそれぞれ1.4倍と1.6倍だったのに対し、社会とのつながりが少ない場合は1.9倍だったことが知られている。ただし、これは社会的なつながり全般を調べた研究であり、家庭内孤立そのものの影響を示したものではない。家庭内孤立が心身にどのような影響を及ぼすのかは、今後さらに検証する必要がある。

【図表6】最も死亡リスクの高いライフスタイルは?

また、2015年に発表されたオランダの研究(※2)によると、社会参加や人との接触頻度、孤独感などによって、認知症の発症しやすさが4〜6割程度上昇することが明らかになっているという。

それだけではない。村山さんによれば、孤独感や孤立感などの社会的つながりの少なさは、冠動脈疾患や脳卒中の発症をそれぞれ3割程度上昇させるという研究結果もある(※3)。

「少し古い研究ですが、つながりがない状態を味わっている人のMRIを撮ってみると、“前部帯状回”という部位が非常に活性化していました(※4)。ここは、肉体的な痛みがある時に反応すると言われている場所なんです。つまり、つながっていない、孤立した状態を体験しているということは、殴られたり転んだりして肉体的に強い苦痛を受けたときと同じくらいのダメージを体が受け取っているということなんですね。人とのつながりがないことなんて『大したことない』って思う人も多いかもしれないんですが、体の反応を見ると、やっぱり大したことなんです」


※2 Kuiper JS, Zuidersma M, Oude Voshaar RC, Zuidema SU, van den Heuvel ER, Stolk RP, Smidt N. Social relationships and risk of dementia: A systematic review and meta-analysis of longitudinal cohort studies. Ageing Res Rev. 2015;22:39-57.
※3 Valtorta NK, Kanaan M, Gilbody S, Ronzi S, Hanratty B. Loneliness and social isolation as risk factors for coronary heart disease and stroke: systematic review and meta-analysis of longitudinal observational studies. Heart. 2016;102(13):1009-1016.
※4 Eisenberger NI, Lieberman MD, Williams KD. Does rejection hurt? An FMRI study of social exclusion. Science. 2003;302(5643):290-292.

「一人が好き」でも孤立は悪影響

家庭内孤立の状態にあるのは、どんな人なのか。村山さんらの調査では、年代が上がるほど割合が増え、85歳以上では同居者がいる人の8.8%が該当した。また、すべての年代で女性より男性の割合が高かった。

つながりが健康に与える影響について論じた村山さんの著書
筆者撮影
つながりが健康に与える影響について論じた村山さんの著書

村山さんによると、典型的なのが「定年後の男性」だという。

「一般的に男性の方が交友関係が少なくて、コミュニケーション能力は女性のほうが高いですね。それは家族関係であっても同じです。外での役割があれば一生懸命頑張るけど、家族に対してはムスっとしているという定年後の男性は結構多い気がします」