研究チームは、2023年に埼玉県和光市で実施された郵送調査のデータを分析した。対象は40〜64歳の2395人と、65歳以上の6429人の計8824人。その結果、家族と同居している人のうち5.8%が家庭内孤立に該当した。

【図表2】家庭内孤立の分布

「家庭内孤立」の人は、家族仲が悪いわけではない

「これまで、社会的なつながりについてはたくさん研究されてきたんですが、家庭内での関係性については明らかにされてきませんでした。その点が、この研究の新しいところです」

一人暮らしよりも家庭内孤立している人の方が精神的な健康状態が悪いことを説明する村山さん
筆者撮影
一人暮らしよりも家庭内孤立している人の方が精神的な健康状態が悪いことを説明する村山さん

意外だったのは、実は家庭内孤立の状態にある人たちは、家族関係が悪くない人が多いということだ。村山さんは「現役世代は仕事が忙しくて生活リズムが合わず、同居者が遠慮をして孤立してしまっているのでは」と指摘する。

「子どもの側は、話が長い親世代の相手をすることを面倒だと感じていて、親世代は子どもや孫をかわいいと思う気持ちが強い。その結果、親世代に寂しさが募る、という構図があると思います」

40代の現役世代でも、家族関係が良いのに生活時間が合わず、孤独感を募らせるケースがあるという。関係が悪くないだけに、余計に周囲からは孤立が見えにくい。

なぜ「同居しているのに孤立」が危ないのか

では、家庭内孤立の何が問題なのだろうか。村山さんらのチームでは、主観的健康感とうつ、ウェルビーイング、孤独感の4つの指標を調査した。

その結果、家庭内孤立の人は、そうでない人と比べて、4指標すべてが悪く、独居の人と比べても精神的健康状態が悪かった。

例えば、家庭内孤立していない人を基準にすると、ウェルビーイングが低い割合は家庭内孤立の人で1.56倍、独居の人で1.21倍だった。孤独感も、家庭内孤立の人は0.76点高かったのに対し、独居の人は0.49点高いにとどまった。

【図表3】家庭内孤立と精神的健康

このように、「家庭内孤立」の状態にある人が、独居の人よりも精神的健康状態が悪いのはなぜなのだろうか。

村山さんは「相対的剥奪理論」によって説明できるという。