「他者の境遇と比較して、本来あるはずのものがないことによって相対的な不満が生じるのが『相対的剥奪理論』です(※1)。この理論にのっとって考えると、独居の人は最初から家庭内での関わりを諦めていますが、同居者がいる場合、本当は得られる可能性がある関わりが得られないことが大きなストレスになっているんだと思います」

独居者は外部からの支援対象になりやすく、本人も助けを求めやすい。コロナ禍を機に強化された孤独・孤立の公的支援では、独居は大きなリスク要因とされた。一方、同居者がいる「家庭内孤立」の人は、支援対象として認識されてこなかったと村山さんは指摘する。

※1 Smith HJ, Pettigrew TF, Pippin GM, Bialosiewicz S. Relative deprivation: a theoretical and meta-analytic review. Pers Soc Psychol Rev. 2012;16(3):203-232.

身体的にも悪影響を及ぼす恐れ

家庭内孤立の影響は、精神面だけにとどまらない可能性がある。

65歳以上の男性3万3083人、女性3万8698人を3年間追跡した別の研究では、同居者がいるのに一人で食事をしている人は、誰かと食事をしている人と比べ、死亡リスクは男性で1.48倍、女性で1.18倍だった。いずれも独居の人よりも悪い結果だったという。

【図表4】孤食による死亡リスク

村山さんは、食事を一人で食べるということは、生活の多くの部分が一人の可能性があるとし、孤食の研究結果と家庭内孤立には似たメカニズムが働いているとみる。ただし、家庭内孤立そのものと死亡リスクとの因果関係は、まだ明らかになっていない。

今回の調査では、心身の機能が低下し、要介護の手前となる「フレイル」も、独居の人より家庭内孤立の人に多かった。研究チームは今後、家庭内孤立が身体的健康や要介護リスクに及ぼす影響を追跡するという。

【図表5】家庭内孤立とフレイル(心身の機能が低下した状態)