パラボラアンテナがこれだけ並ぶと壮観です。私たちが「パーフェクTV!」、今の「スカパー!」の前身を立ち上げた30年前は、こんな設備はまだ影も形もありませんでした。

東京・江東区のスカパー東京メディアセンターにて
東京・江東区のスカパー東京メディアセンターにて。

衛星放送という事業に先行きがあるかわからない中で生まれた企画会社に、大野さんは飛ぶ鳥を落とす勢いだった電通を辞めて飛び込んできた。「なぜ高給の会社を捨ててわざわざ」と訝しんだものです。

一緒に過ごすうちにわかったのは、大野さんは自分で道を切り開きたい人なんだということ。NHKを経て始められた今のお仕事にも、彼の性格が現れています。研究対象にしたのは、テレビの特番でつくられる2時間ドラマ。「映画や連続ドラマを論じる研究者は数多くいても、2時間ドラマを真面目に扱う大学教員はほとんどいない」と語ります。「安っぽい」「パターンが同じ」と侮られてきたジャンルにこそ、制作された当時の社会や視聴者の姿が映し出されている――そんな問題意識から研究を重ね、本にまとめられています。ほかの人が見過ごしているところに、新たな価値を見出していく。大企業を離れて衛星放送の企画会社に飛び込んだ頃から、大野さんは独自の眼差しを世の中に向けているのです。

(構成=加藤圭悟(本誌編集部) 撮影=大槻純一)