塩谷さんは屋久島で年に一度、「やくしま森祭り」という島民のための音楽イベントを開催しています。立ち上げメンバーの一人である私の妻を介して、直接お会いできたのは2011年のことでした。実は彼の音楽ユニット・SALT+TOKU+GENを福岡まで追いかけるほど、以前から大ファン。念願の対面に胸が高鳴ったのを覚えています。

東京・国立音楽大学のレッスン室にて。
東京・国立音楽大学のレッスン室にて。

塩谷さんのピアノは、同じ曲でも一度として同じ演奏になりません。ファンとして演奏に触れていたころは、ただその凄みに浸っていました。そして、直接の交流を重ねていくと、彼の志の高さも見えてきます。「やくしま森祭り」をはじめ、小学校で無料のコンサートを開いたり、子供向けの音楽番組を本気で作ったり。演奏そのものを磨くだけでなく、音楽を次の世代へ届けることにも全力を注いでいるのです。

今では指導する若い学生たちに、かつて手がけた番組を「見ていました」と言われることも多いのだとか。本人は「音楽は瞬間の芸術であり、演奏したら完結するもの。文化を継続させるのは難しい」と謙虚に語りますが、先人から受け取ったものを、見事に次へ渡すことに成功しています。

(構成=堺 祐希(本誌編集部) 撮影=宇佐美雅浩)
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