3日間で22億4000万円のヒット
今年の夏休み映画最大の話題作『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』。その内容がSNSやネットニュースをざわつかせ、コアファン以外の一般層を巻き込んで、雪だるま式に話題も興収も膨らんでいる。公開後3日間の興行成績は22億4000万円で、1週間前に公開された『キングダム 魂の決戦』の15億8400万円を超えた。
本作の作品性は異色だ。シネコンの上映後の場内に“ざわめき”や“どよめき”が起こるのが象徴的だが、かわいいキャラクターたちの子ども向けファミリーアニメだと思って鑑賞すると、とんでもない衝撃を受ける。
筆者が鑑賞した上映回の終了後には、子どもに「大丈夫?」「最後の意味わかった?」と声をかける母親や、「シュールな内容だなあ」と驚く子連れの父親の姿があった。SNSでも「ホラー映画だった」という若い世代の声や、「小学校低学年の子どもが楽しかったと言っているけど、たぶん理解していない」といった親のポストが目立っている。
本作は、就学前の幼い子どもたちにとっては、かわいらしいちいかわたちの夏の冒険物語だが、成長過程の子どもや大人にとってはそれだけではない。その根底にあるのは、「復讐による負の連鎖と因果応報」を描く悲劇であり、7月に亡くなった東野圭吾の小説にも通じる“残酷な物語”でもあるのだ。
『鬼滅の刃』と同等の上映規模
もともと本作は、映画業界最大手の東宝が、今年の夏興行の勝負を託した大本命。そのファンダムの大きさと熱量の高さ、かわいいものへの感度が高い子どもおよび若い世代の女性層がそのメインになることによる社会的な話題を巻き起こすポテンシャルに加えて、事前の規格外のコラボ商品展開などから、シネコンをはじめとする興行関係者の期待値は公開前から極めて高かった。
それが顕著に表れたのが、封切り時のスクリーン占拠。公開初日、TOHOシネマズ池袋は、全10スクリーンで1日計41回の上映(スクリーンによって別作品の上映回もある)という異例のシフトで臨んだ。朝7時の回から、夜25〜27時や26〜28時の上映もあり、まるでオールナイト上映イベントのよう。稀に見る翌朝までの上映回が設けられ、その上映回数は400億円ヒットを記録した劇場版『鬼滅の刃』シリーズと同等の規模だ。
ただ、アニメの聖地・池袋に立地する同シネコン特有の地域性からの極端なシフトでもある。TOHOシネマズ新宿は、全12スクリーン中、IMAXレーザーを含む7スクリーンを開けていた。ともあれ、初日のシネコンのスクリーン占拠としては、近年稀に見る規模だった。


