オーストラリアが「史上最大」と呼んだ協定
2026年4月、オーストラリア・メルボルンに停泊した海上自衛隊の護衛艦「くまの」の艦上。日本の小泉進次郎防衛大臣と、オーストラリアのリチャード・マールズ国防大臣が、日本が今後建造しオーストラリアに輸出する護衛艦3隻の契約に署名した。
次期汎用フリゲート艦として、三菱重工業が建造することで両国が昨年すでに合意した、「もがみ」型護衛艦の能力向上型(新型FFM)の一部に当たる。
2025年8月5日、オーストラリア政府は海軍の次期汎用フリゲート艦として、新型FFM11隻の導入を発表している。中国の海洋進出を念頭に、オーストラリア政府は主要な水上戦闘艦を計26隻へ拡大する軍備再編計画を進めており、新型FFM11隻はその中核をなす。
AFP通信によれば、総額は約100億豪ドル(約1兆1400億円。7月22日現在のレート、1豪ドル114.06円で換算、以下同)規模となる。マールズ豪副首相兼国防相は、「日豪間で結ばれた防衛産業の合意として、明らかに史上最大だ」と強調した。
日本の防衛産業は長らく、世間の大きな関心を集めることもないまま、縮小の傾向をたどっていた。今、高まる中国の地政学的脅威を念頭に、転機が訪れようとしている。
20年で防衛産業から100社超が去った
米外交専門誌のディプロマットは2023年9月の報道で、過去20年間で100社以上の日本企業が防衛事業から撤退したと報じている。
2021年には造船・重機大手の三井E&Sホールディングスが、艦艇・官公庁船の建造部門を三菱重工業に売却した。建機最大手のコマツは2019年、利益率の低さを理由に陸上自衛隊向け軽装甲機動車の新規開発を断念した。
化学大手のダイセルは2020年、パイロット用緊急脱出装置の生産から手を引き、住友重機械工業も2021年、機関銃の製造から撤退した。いずれも自衛隊向けの装備品を長年製造してきた企業だ。
ある日本企業の幹部は、ディプロマットの取材に対し、「政府との信頼関係を維持するために防衛事業を続けているが、事業としては魅力がない」と明かしている。
別の企業幹部は、防衛事業の拡大は、「会社の評判を損なうリスクがある」とまで語った。防衛事業は細々と続けるが、拡大の見通しはない――。そう考える企業は、業界内でも少なくなかった。

