顧客は数十年、自衛隊だけだった

防衛産業で撤退や統廃合が多発している理由はどこにあるのか。

ディプロマットはアメリカとの比較において、日米の防衛企業の売上構造の違いが明暗を分けたと論じる。アメリカでは主要防衛企業の売上の9割前後を防衛部門が占めるのに対し、日本では大半の企業で1割に満たない。

売上の大半が民生品である以上、防衛分野に経営資源を集中させることは難しく、大量生産によってコストを下げる規模の経済も働かない。結果として、米大手が10%以上の営業利益率を確保する一方、日本企業の利益率は5%を下回る水準にとどまっていた。

顧客構造の違いも顕著だ。米ビジネスニュース専門局のCNBCが指摘するように、日本の防衛企業にとっての顧客といえば事実上、数十年にわたり自衛隊だけだった。

仮に政府が防衛費を増額したとしても、輸出のための営業体制を整えたり、コストを下げたり、余剰生産能力に投資したりする誘因は生まれにくい。

経済産業省ですら2026年2月の防衛産業ワーキンググループの資料で、防衛事業が民生事業に比べて利益率が低く成長も見込めなかったため魅力が低下し、それが防衛各社の撤退につながったと総括している。

利益率は非常に低い。防衛装備品の利益率は契約時の想定で7.07%(2020年度)とされていたが、受注後の資材高騰などで実際は平均2〜3%にとどまるとディプロマットは指摘している。

「真の汎用フリゲート」と評された新型FFM

防衛事業からの相次ぐ撤退を受け、浜田靖一防衛相(当時)は2023年1月、防衛装備品の利益率の上限を従来の約2倍にあたる15%に引き上げる方針を発表した。政府は2023年度からの5年間の防衛費を総額43兆円とする計画も進めていた。

裏を返せば、抜本的な予算措置を講じなければならないほど、防衛産業の経営基盤は弱体化していたということになる。

こうして緩やかな衰退の道を辿っていた日本の防衛産業に、転機が訪れた。

オーストラリア政府が中国の脅威を念頭に進める、軍備再編計画。水上戦闘艦を計26隻へ拡大するこの計画で、中核となる契約を三菱重工業が受注したのだ。

オーストラリア側は新規調達する次期汎用フリゲート艦について当初、ドイツのMEKO A-200、スペインのALFA3000、韓国の大邱(テグ)級、そして日本の新型FFMを候補に比較検討を重ねていた。最終選考でドイツの造船大手TKMSを破り、三菱重工業が勝ち取った形だ。

オーストラリア政府は、新型FFMの選定を「コスト・能力・納期の点で最良だったため」と説明した。

コンロイ防衛産業相によれば、最終選考に残った3案(MEKO、もがみ型、新型FFM)の取得費は同等だが、ライフサイクル全体ではもがみのコストが大幅に低い。

「もがみ」型護衛艦
「もがみ」型護衛艦(写真=海上自衛隊/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

また、マールズ副首相兼国防相は新型FFMが「オーストラリアにとって最良のフリゲート」であると評価している。ステルス性に優れ、長射程ミサイルを撃てる32セルのVLS、高性能のレーダーとソナーを備える。対空戦と対潜戦の双方をこなすことから、マールズ氏は「真の汎用フリゲート」と評した。