なぜ、SNS上にはフェイク情報や差別感情をあおるコンテンツが多く見られるのか。『ルポ アルゴリズム政治 計算された「おすすめ」の世界に吸い込まれる人たち』(朝日新書)を出した朝日新聞取材班によると「過激で断定的な内容であるほど視聴者の感情を刺激し、拡散と収益の可能性が高まるからだ」という――。
スマホを握る男の手と、オフィスのノートパソコン
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「負の感情」ほどカネになる構造

ソーシャルメディアのアルゴリズムを「ハック」する形で、偽・誤情報を含む政治動画や差別的な動画が拡散されている。

SNSや偽・誤情報の問題に詳しい国際大学の山口真一教授(社会情報学)は、背景に「負の感情をあおるほど収益につながるアテンション・エコノミーの構造的な問題がある」と指摘する。

山口氏によると、怒りや嫌悪、不安といった感情は、人々の注意を引きやすく、制作者は広告収入を得やすい。特に、特定の国や集団への反感を刺激する内容は感情を動かしやすいという。対立構造になりやすい政治系動画や、「外国人政策」といったテーマでもその傾向は顕著だ。

こうした環境下では、フェイク情報や、悪感情をあおるコンテンツの作成は、むしろ「合理的な戦略」となってしまう。過激で断定的であるほど感情を刺激し、拡散と収益の可能性が高まるからだ。動画の作り手は、その信条や差別意識だけでなく経済的動機も無視できないというのが山口氏の指摘だ。

視聴者が動画の真贋しんがんを見極められる人ばかりとは限らない。動画の説明欄をよく読めば「フィクション」などと書かれていても、視聴者に十分に伝わるとは限らないのは、取材を通してまざまざと感じた。

「(動画の内容が)現実と受け止められれば、差別意識の強化や現実認識のゆがみにつながりかねない」と山口氏は警鐘を鳴らす。生成AIの精度が日に日に高まるなかで、その危険性がより増しているのは間違いない。

「儲けるための過激化」を防ぐ必要性

こうした動画の氾濫は、民主主義全体にも大きな影響を及ぼしかねない。

反応を集めやすい過激なコンテンツが優先されるアテンション・エコノミーの構造の下では、複雑な議論や熟議はソーシャルメディア上から姿を消してしまう。政治家や政党が発する政治的メッセージも、結果として「真偽や論理的一貫性よりも、より強い感情反応を引き出す方向へと最適化されやすくなる」と山口氏。それは、合意形成の難しさや分断の固定化への道になってしまう。

どういった対策が求められるのか。

ソーシャルメディアを使う側としては、強い怒りや嫌悪をかき立てるコンテンツほど、一呼吸おいて考える習慣が必要になってくるという。山口氏は「(直接の当事者の証言や公式発表などの)一次情報はあるか」「どういう目的で投稿されているか」などに着目してほしいと訴える。

そして構造的な解決策として、「ウソや過激さが合理的ではない仕組みをつくる」。例えば政治系動画については、選挙期間中は広告収益を停止することで、少なくとも、「儲けるために過激化する」という動機を弱めることができるという。