それでも流れ続ける「政治系動画」
その直後に始まったのが、日本での「BAN(禁止)祭り」だった。だが、それまで少なくとも2年間は野放しだった「政治系動画」や「嫌中動画」の問題を、YouTubeはどれほど考慮したのだろうか。動画の根本的な問題点に向き合っていないとすれば、果たして実効的な対策は取れるのだろうか。
本書『ルポ アルゴリズム政治』を執筆中の2026年8月、ウォッチしていた複数のチャンネルの収益化は止まったままのようだ。一方で、投稿を続けているチャンネルも多い。本書で紹介した、「高市首相の声明にベネズエラ人が感謝している」という真偽不明のショート動画を投稿していたチャンネルは、今も政治をテーマとしたショート動画を投稿し続けている。広告収益を得ているのか、止まっているのか、連絡先は公開されておらず、分からない。
また、真偽不明の「嫌中」動画を流すあるチャンネルも、投稿を続けている。複数の動画で再生回数が数十万回に上り、広告もついているが、収益を得ているか、確定的なことは分からない。
コメント欄には依然として、野党の政治家をののしる言葉や、中国人に対する差別的な言葉が並んでいる。
「放置しておくのが得策」としたのか
YouTubeの公式サイトによると、動画投稿者に入る広告収益は、全体の広告収益の55%だ。残りの45%は「大部分がYouTubeのビジネスに再投資されています」とある。
推測の域を出ないが、YouTube側に、広告収益のためには、視聴者を引きつけている動画は「政治系」であれ、「嫌中」であれ、「放置しておくのが得策」という考えはないだろうか。
嫌中動画から高市首相の動画にシフトし、2週間で50万円の収益を得たと語っていた60代元国家公務員の男性は、収益化を停止されても新たなチャンネルを思案中だと明かしていた。ジャンルは明かさなかったが、大量生産だと判断されないよう工夫をして、投稿は続けるという。
「これからもYouTubeで稼ぎますよ。これを中心に、妻子を養っていくんで」
その言葉が耳に残っている。
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