年齢を重ねても記憶力が衰えない人がいる。ハーバード大学医学大学院神経内科学部アシスタント・プロフェッサー(助教授)の勝見祐太さんは「80歳をすぎても50~60代のような記憶力を持つ高齢者は、スーパーエイジャーと呼ばれている。複数の研究によると、彼らには生物学的な要因と社会的な要因が影響している」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、勝見祐太『ハーバードが教える 認知症にならない脳のつくり方』(アチーブメント出版)の一部を再編集したものです。

教室で講義を受ける高齢者
写真=iStock.com/Drazen Zigic
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脳が20~30歳若い「スーパーエイジャー」

2012年、米国ノースウェスタン大学の神経科学者エミリー・ロガルスキと医師マーセル・メスラムらの研究チームは、80歳以上でありながら、自分より20〜30歳も若い人と同等かそれ以上の記憶力を持つ高齢者を発見し、報告しました。

2016年には、私たちの研究室においても60歳以上でありながら、20代の若者と同レベルの記憶力を示す高齢者が存在することを確認し、追って研究を進めています。「スーパーエイジャー」とは、このように同年代の他者に比べて優れた記憶力を持つ高齢者のことを指します。

ある人がスーパーエイジャーであるかどうかは、どうやって決めるのでしょうか。

これには、主に記憶力を測る標準的な検査の1つである「言語学習テスト」が用いられ、その結果によって決められます。「言語学習テスト」では、参加者は16個程度の単語を1つずつ聞いて、30分の休憩を挟んだ後で、その単語をできるだけ多く思い出すことが求められます。

3つの基準を満たすのは14~20%程度

スーパーエイジャーの具体的な認定基準は、

①高齢者であること
②言語学習テストにおいて、80代ならば50〜65歳の平均、60代ならば18〜32歳の平均以上のスコアを出すこと
③その他の認知機能検査でも正常範囲内であること

といった条件を満たすことです。研究によっても多少異なりますが、この基準を満たすのは対象の年代となる高齢者のなかでも、およそ14〜20%程度であると考えられています。

スーパーエイジャーの若々しい記憶力の源は、いったいどこにあるのでしょうか。

これまでの研究によると、スーパーエイジャーは一般的な高齢者に比べて、脳のつくりや遺伝子といった「生物学的」な要因と、性格や他者とのつながりをはじめとした「社会的」な要因の両方において特別であることがわかっています。

まずは、生物学的な要因から見ていきましょう。