「ふつうの高齢者」との決定的な違い

スーパーエイジャーの脳をMRIで観察し、そのデータを解析すると、すぐに目を引く特徴があります。同年代の平均的な高齢者と比べて、明らかに違うところがあるのです。

それは脳のある部分の萎縮が、極端に少ないこと。

通常、私たちの脳は40代ごろから少しずつ萎縮し始めます。特に「海馬(記憶の形成に不可欠な部位)」や「前頭前皮質(判断・注意・計画など複雑な脳機能を担う部位)」の萎縮は、認知機能の低下と深く関係しています。

その点、スーパーエイジャーでは、脳の特定の部位の萎縮が同年代と比べて明らかに少ないことがこれまでに何度も報告されています。

スーパーエイジャーにおいて萎縮が少ない脳部位はいくつか存在しますが、そのなかでも特に注目されているのが「中帯状皮質前方部(aMCC)」という部位です。

aMCCは、注意や感情の調整、体内の臓器の制御、やる気や努力の捻出をはじめとした様々な機能に深く関わっており、スーパーエイジャーではこの部位の皮質の厚みが、より若い人と比べてもほとんど変わらないことがわかっています。

脳の老化に抵抗し続けている証拠

さらに重要なのは、スーパーエイジャーのaMCCの皮質の厚みは、「最初から厚い」だけでなく、「萎縮のスピード自体が遅い」ために厚い可能性があることです。

前述の神経科学者ロガルスキらのチームが2017年に発表した研究では、スーパーエイジャーは約18カ月の追跡調査の間に、平均的な高齢者の約半分のスピードでしか脳の容積が減少しなかったことが示されました。

これはスーパーエイジャーの脳が、老化に対して「動的に抵抗し続けている」ことを示しています。いわば、下りのエスカレーターを上に向かって歩いているようなイメージです。

加えて、近年は、AIを活用して脳全体の生物学的年齢をより包括的に見る解析も行われています。この方法では、スーパーエイジャーの脳画像データは実年齢より「わずかに若い」と判定され、さらに2年間の追跡では脳の老化速度そのものが遅いことが示されています。

実年齢では80代でも、脳の「若さ」という点では50代に近い――これがスーパーエイジャーの実態です。