NHK「ブラッサム」では、珠(石橋静河)と保(金子大地)が北海道で生活するシーンが描かれている。モデルとなった宇野千代は、どのような暮らしを送っていたのか。ルポライターの昼間たかしさんが、文献などから札幌時代の千代に迫る――。
※本稿は、一部にネタバレを含む場合があります。
史実でも親戚の世話で拓銀に就職、札幌へ
NHK朝の連続テレビ小説「ブラッサム」。第6週(11月2日~)で、珠(石橋静河)の妊娠が発覚、保(金子大地)と共に喜びを感じるが、同時に学費や生活費などの現実ものしかかってきた。そんな時に現れたのは、保の母・照子(山田真歩)と、照子のいとこで札幌の銀行に勤める木村正吾(三宅弘城)。正吾は援助を条件に、卒業後に札幌の銀行に勤めることを提案する。
史実では千代の夫・藤村忠は卒業後に、千代の親戚の中津井高助の世話で北海道拓殖銀行に就職し札幌に移っている。二人の関係は、千代の父方の祖母が高助の父の妹というものであった。
高助は小学校を卒業後に陸軍に入り、下士官として旭川の連隊などで勤務していた。その後、北海道で政府の御用商人として一旗揚げようと考えていたところ、「北海タイムス(北海道新聞の前身の一つ)」の理事だった妻の兄である東武から人物を見込まれ、33歳の若さで支配人(総務、営業などの統括)になった。
そんな人物に見込まれて北海道拓殖銀行に就職することになったのだから、鳴り物入りで札幌に向かったのかと思いきや、そんなことはない。千代の作品では、札幌にいくまでの記述にはばらつきがある。
伯父の置いて行った金は、二人の身の回りを整理し、なお旅費を残すのに充分だった(『或る一人の女の話』講談社文芸文庫、1989年)
北海道へ渡った恋人から長い手紙が来ました。『今日はじめて月給と言うものを貰った。その半分を君のところへ送る。これで出発の用意をして、残りを旅費にして、一日も早くこちらに来て下さい。小さい部屋を借りておきました』(『自伝的恋愛論』大和書房、1996年)

