ガソリン価格は補助金で抑えられ、国の借金はインフレで目減りしている。一見すると、悪くない話に思える。しかし、そんな都合のいい話は続くのか。アメリカの財務長官が、高市政権の政策に待ったをかける理由とは。「責任ある積極財政」が見落とす死角を、西田・安田両氏が議論する――。

アベノミクスは「75点」では、サナエノミクスは?

【西田】 アメリカのベッセント財務長官が「ストップ・ザ・リフレーション」、日本はリフレ政策をやめるべきだと発言したことが話題になりました。

【安田】 9月1日のG20における記者会見でのことでしたね。発言に対して片山さつき財務大臣も反応していました。日本の政策にアメリカ政府が直接注文をつけた事実はない、と。

アメリカのベッセント財務長官と会談を前に握手する片山さつき財務大臣(写真=共同)。ベッセント氏の発言以降、片山氏は「高市総理はリフレ論者ではない」と説明を重ねている。
アメリカのベッセント財務長官と会談を前に握手する片山さつき財務大臣(写真=共同)。ベッセント氏の発言以降、片山氏は「高市総理はリフレ論者ではない」と説明を重ねている。

【西田】 発言を受けて、ドル円は160円台から一時152円台まで一気に円高が進みました。また158円台まで戻ってきているものの、アメリカの要人からこうした発言が出てきたのは、ちょっと興味深いと思いませんか? これまでは円安基調で低金利、株価も高いという「円安ホクホク」で盛り上がってきたわけですが、どうも転換点を迎えつつあるんじゃないでしょうか。そんなわけで、今回はリフレ政策について安田さんと議論していきます。

【安田】 わかりました。まず、リフレ政策というのは、金融緩和や財政出動を通じて「物価が上がる」という期待を作り出し、デフレ脱却を目指す政策です。リフレの代名詞と言われているのがアベノミクス。西田さんはアベノミクスをどう評価していますか?

【西田】 以前からアベノミクスについて、点数をつけるなら「75点」と言っているんですよ。株価の引き上げにはつながったし、円安基調になり、大企業を中心に業績が改善しました。自殺者数は激減、正規雇用者数も改善しました。日本経済をある種「改革」したと言えるんじゃないかと。経済学の世界ではどう考えられているのでしょうか。

【安田】 当時はデフレのどん底で、何をやっても日本経済は浮上しないんじゃないかと思われていました。そこで大胆な拡張型の経済政策をやったことは評価すべきだ、という声も確かにあります。当時はほぼゼロ金利で、政策金利を下げる余地がなかった。その状況で、市中に出回っている国債をどんどん買い続ける「異次元の金融緩和」によって、デフレ脱却を図ったわけです。

【西田】 インフレ目標を2%と言ってきましたからね。でも、結果はどうだったかというと――。

【安田】 それでも物価は上がらなかった。

【西田】 はい。

【安田】 その意味では、アベノミクスで最も注目された「第一の矢」は狙い通りにいかなかった。ところが、量的緩和を通じて為替に影響がありました。円安が進んだため、輸出企業を中心に業績が回復し、株価も上向いた。

(構成=稲泉 連 撮影=大槻純一 写真=共同通信社)

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