日本の企業が太刀打ちできないほど莫大な利益を稼ぐアメリカのテック企業。「一部の富裕層が大多数を管理するファシズムに繋がりかねない」。危機感を募らせる斎藤幸平氏は、今こそ計画経済が必要だと提案する。市場経済を変える処方箋になりうるのか、西田・安田両氏と激論を交わす――。

AIで効率化しても労働時間が減らない理由

【西田】今回はゲストに斎藤幸平さんをお迎えしました。2020年に刊行された『人新世の「資本論」』は大ベストセラーになりましたが、「暗黒社会主義」という不穏な言葉も登場する今年4月の最新刊『人新世の「黙示録」』も話題になっていますね。

【安田】私もとても面白く読んで、本が付箋だらけになりました。

【斎藤】ありがとうございます。私は安田さんのような生粋の経済学者とは違って、「経済思想家」という視点から現代の資本主義について考えています。主な研究内容は、マルクスが残した著作や史料の中から、これまであまり光が当てられてこなかった環境問題や計画経済についての思索を発掘し、現代風にアップデートすること。その知見をベースに気候変動の時代にどういった社会を目指せばいいのかを一般向けに論じたのが前作の『人新世の「資本論」』でした。今回の新刊では、そこで論じきれなかった計画経済の話や、進化の著しいAIと人類がどう向き合っていくべきなのかを書いています。

【西田】なるほど。AIの進展が目覚ましい我々の社会について、多くの人の生活はどうなっていくと斎藤さんは考えているんですか?

【斎藤】例えば、「AIで会社員は楽になるのか、さらに忙しくなるのか」と問われれば、今の社会では当然、忙しくなりますね。AIによる効率化で8時間の仕事が4時間でできるようになっても、資本主義のもとでは同じ人が倍の仕事をさせられるだけだからです。

【西田】生産性が上がっても労働時間は短くならない。

【安田】効率化されても労働時間が落ちないというのは、デジタル化で実際に起きたことですね。とはいえ、ドイツのようにうまく減らせている国もある。

【斎藤】違いは制度にあります。豊かになりながら労働時間を減らすには、市民社会や労働運動の側から規制をかけていくしかない。しかし、日本は労働運動が弱く、企業が甘やかされてきた。AIやロボットが発展すれば恩恵を受けられるはずなのに、まるで脅威のように見えるのは、我々の社会の側に問題があるわけです。

【西田】いわゆる「ブルシットジョブ」をつくり出してでも、資本主義社会では人間が労働に縛られてしまう……。

【斎藤】その通り。社会のあり方を変えれば、ケインズが言ったように1日3時間働けばいい世の中もつくれるはず。そうならないのは、資本主義のもとでは労働者を働かせなければ資本が増えないとされているからです。だから、技術がどれだけ発展しても、労働時間が減らない。

(構成=稲泉 連)

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