家庭が貧しいから、希望する進学先を選べない。それはなくすべき悲劇だ。国が始めた「高校無償化」は、そんな格差の解消が目的に思える。ところが、実際には、「公立より私立」という格差を広げつつあるのだ。なぜこんなことになったのか。西田・安田両氏が語り合う――。
自民党・公明党・日本維新の会代表
写真=共同通信社
2025年2月に行われた自民党・公明党・日本維新の会の3党合意。少数与党だった自民・公明が、維新に譲歩する形で高校無償化が決まった。

授業料補助に34万円の差 不平等な「無償化」政策

【西田】今年4月から「高校無償化」が始まりましたね。まずツッコミを入れておきたいのは、そもそも最近の「無償化」それ自体が、どうなのかということです。「無償」と言いながら、実際には授業料のみが対象で完全にタダになるわけではありません。こうした誤認を誘う言葉をやたらと使う最近の傾向に、僕はずっと憤りを感じています。無償はタダに決まってるだろ!

【安田】生徒が負担するはずだった授業料を学校に交付する形を取ることを考えると、実態としては一律の「補助政策」ですからね。

【西田】そうなんです。この政策の歴史を紐解くと、2010年の民主党政権下で成立した高校無償化法に行き着きます。「補助金」と言うとバラマキ批判を浴びやすいから、最近は「無償化」と言い換えたがるわけですが、実質はほぼ同じ。誤認を誘うような呼び方はよろしくない。

【安田】背景を補足すると、4月から始まった高校授業料の「完全無償化」は、もともと維新が大阪の地域政策として進めていた高校の無償化を、国政での連携を機に全国展開させた政策です。民主党時代の政策は、公立も私立も生徒一人あたり11万8800円の同額を支援するシンプルなものでしたが、そこに大阪府が私立へ独自の支援金を積み増し始め、後に東京都も続いた。この4月から始まった取り組みは、その延長線上にあります。

【西田】「小さな政府」を掲げる維新が、なぜか手厚い給付政策をゴリ押しするというねじれた構造も気になりますが、それはさておき。安田さん、経済学的な視点からはこの政策をどう評価できそうですか?

【安田】公共性の高い高校教育の負担を減らすという方向性自体は、福祉政策としてまっとうに思えます。ただ、見過ごせない問題が2つあります。

【西田】問題というのは?

【安田】1つ目は、財源となる「就学支援金」の額が、公立高校に通う生徒と私立高校に通う生徒で非対称な点です。

【西田】公立高校の年間上限が11万8800円なのに対し、私立高校は平均授業料から算出された45万7200円。その差は約34万円にも上ります。

【安田】格差が大きすぎないかと。問題はこの34万円の差が、結果的に公立と私立の間の不平等を生んでしまうことです。本来、私立に通わせる家庭は相対的に所得が高い傾向にあります。そうした家庭の生徒を対象に45万円もの手厚い補助が出る一方、公立に通う生徒には11万円。公私を問わずすべての高校生の学費を実質ゼロにする意義は認めつつも、この配分の非対称性には強い不公平感が残るはずです。

(構成=稲泉 連 撮影=大槻純一)

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