これまで現役世帯の社会保険料負担は増えるばかりだった。引き下げの機運が高まる中で、槍玉に挙がっているのが「主婦年金」だ。夫が支払う社会保険料だけで年金をもらえるのは、「ずるい」優遇策なのか。西田・安田両氏が、政財界に蔓延する拙速な議論に待ったをかける――。
党首会談に臨む自民党の高市早苗首相(奥右)と日本維新の会の吉村洋文代表(奥左)(写真=共同)。4月に行われた実務者協議では、「主婦年金」の縮小で意見を一致させた。
党首会談に臨む自民党の高市早苗首相(奥右)と日本維新の会の吉村洋文代表(奥左)(写真=共同)。4月に行われた実務者協議では、「主婦年金」の縮小で意見を一致させた。

専業主婦向けの年金制度自民・維新が縮小を検討

【西田】与党の自民党と日本維新の会が「主婦年金」の縮小を検討しているという報道がありました。こうした議論が報道されるとすぐ、「専業主婦は時代遅れ」とか「優遇」とか「損か、得か」といった話がネットで盛り上がったりするわけです。ここではそういうわかりやすい話にまずは水を差し、制度の複雑な構造や歴史を冷静にひもとくところから始めてみましょう。

【安田】社会保障についてのニュースを見ていると、「103万円」とか「106万円」「130万円」と、いくつもの「年収の壁」という言葉が出てきます。「壁」が何個もあってややこしい、と多くの人が思っているんじゃないでしょうか。

【西田】でしょうね。ただ、そのあたりを大まかにでも理解しておかないと、社会保険制度の議論は見通せないわけです。例えば、さきほど言った「主婦年金の縮小」もそのなかの議論の一つです。

【安田】いわゆる「主婦年金」は、会社員や公務員に扶養される配偶者が、自分で保険料を納めなくても国民年金に加入できる、という制度ですね。

【西田】はい。年金制度では、会社員や公務員として働く本人を「第2号被保険者」と呼びます。そして、その人に扶養される配偶者のことを「第3号被保険者」と呼ぶ。今回、自民党と維新の間で話し合われているのは、この第3号の人たちへの年金の扱いを見直そう、というものです。ちなみに、僕も安田さんも大学に雇われて教鞭を執っているので「第2号被保険者」。この第2号が日本でいちばん人数が多くて、厚生年金の被保険者だけで約4740万人います。

【安田】いちばんのボリュームゾーンですね。

【西田】次に多いのが、自営業やフリーランス、学生などを含む「第1号被保険者」で約1370万人。そして、第3号は約640万人です。数字にしてみると、日本社会のあり様の一つが見えてくるんじゃないでしょうか。

【安田】日本の国民皆年金を考えるうえでの「基本」となる数字だ、と。

【西田】で、第1号被保険者は国民年金・国民健康保険に入り、第2号は厚生年金に入っています。正確に言うと、第2号も全員が国民年金(基礎年金)に加入し、その上乗せとして厚生年金にも入っている、という2階建ての構造になっています。そこでもう一つ前提として知っておいてほしいのが、この制度がどう作られてきたかです。日本では雇用されている人が圧倒的多数であるため、社会学で言う「男性稼ぎ手モデル」によって設計されてきた歴史があります。

【安田】夫婦で収入源が一つであることを、「シングルエンジン」なんて言うこともありますよね。

(構成=稲泉 連 撮影=大槻純一 写真=共同通信)

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