ひとりの老後を豊かに楽しむには、何が必要なのか。精神科医の和田秀樹さんは「以前、私が東京・世田谷の成城学園に住んでいた頃、すれ違った50代と思われる恰幅の良いサラリーマン男性は、右手に持ったものをペロペロとなめて、見ているこちらが幸せになるような嬉しそうな様子で歩いてきた。あの男性の嬉しそうな顔を思い出すたび、『結局、幸せってこういうことなんだよな』と再認識する」という――。
※本稿は、和田秀樹『60歳からの 世にも愉しい「ひとり時間」の過ごし方』(永岡書店)の一部を再編集したものです。
「諦める」の本当の意味は「明らむ」
年齢を重ねてくると、当然ながら悲しい出来事に直面します。パートナーの死、友人の死、あるいはペットの死……相手への想いが強いほど、喪失感は大きいものです。
そんなときには、どうすればいいのでしょうか?
答えは、「諦める」しかありません。
諦めると書くと、「なんて冷たいことを」と感じるかもしれませんね。
でも、諦めるという言葉の本当の意味は、仏教用語の「明らむ(あきらむ)」です。つまり、物事の真理や道理を「明らかにする」「つまびらかに観る」ことで、自分の願いが叶わない理由をはっきり理解し、執着せずに受け容れることなのです。
時間は二度と巻き戻せない。
その厳粛な事実を受け止め、「じゃあ、これからの自分の人生どうするか?」と動き出すしかありません。
もちろん、ゆっくりと、自分のタイミングで動き出せば大丈夫です。

