2026年9月13日に投開票された沖縄県知事選で、元那覇市副市長の古謝玄太氏が初当選した。古謝氏は42万3124票、対する現職(当時)の玉城デニー氏は27万6060票と、約14万7000票の差をつけた大勝だった。メディア論を専門とする神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「新聞やテレビの報道では、玉城氏の敗因としてSNSや経済を挙げる声が多い。だがこうした声は、わかりやすく整理された“県外の視線”に過ぎない」という――。
沖縄県知事選で初当選を決め、気勢を上げる古謝玄太氏(右)と、落選が決まり厳しい表情の玉城デニー氏=2026年9月13日夜、那覇市
写真=共同通信社
沖縄県知事選で初当選を決め、気勢を上げる古謝玄太氏(右)と、落選が決まり厳しい表情の玉城デニー氏=2026年9月13日夜、那覇市

古謝氏が支持された本当の理由

今回の選挙でまず目を引くのは、古謝氏が得た過去最多の42万3124票である。8年前の玉城氏の39万6632票を大きく上回り、歴代初めて40万票を超えただけではない。投票率は61.57%と、前回から3.65ポイント上昇したとはいえ、過去15回の知事選では、下から4番目である。

とりわけ若年層が上がったと言われているものの、投票率と得票数に鑑みると、有効得票数の約6割を古謝氏が得たのである。

では、なぜ、それほどまでに古謝氏が支持されたのか。

東京に本社を置くメディアでは、まず「基地よりも経済」との言い方が目立つ。読売新聞は、投開票日当日の出口調査で、「有権者が最も重視したのは『景気や物価高対策』(20%)で、経済問題への関心の高さをうかがわせた」とし、「『基地問題より経済』鮮明」との見出しを掲げた(2026年9月15日付朝刊)。

他方で、別の要因を挙げる声は、選挙期間中から少なくない。SNSである。朝日新聞は、投開票3日前の9月10日に「『越えてはならない一線越えた』沖縄県知事選で混迷するSNS空間」と題した記事を掲載し、「偽・誤情報がSNSに相次いで投稿されている」とし、「根拠不明のまま不安や怒りをあおる情報が拡散して」いると報じている。

「経済」でも「SNS」でもない

選挙結果の分析でも、日本経済新聞の取材に対して、沖縄国際大学の野添文彬教授は、次のように答えている。

デマや誹謗中傷によって沖縄社会の分断が進んだように感じている。SNSを巡る問題は日本の民主主義そのものを破壊するような出来事だ。

経済重視も、SNSも、まったくの外れではない。調査に基づく分析もあれば、専門家による見立てもある。ただ、それでも、沖縄県外に住んでいる私(たち)には、今回の選挙で、沖縄の人たちが何を考えて投票したのかを、じゅうぶんに知るのは難しいのではないか。

もちろん、報道各社の出口調査を見れば、ある程度の趨勢は推測できる。NHKによる調査は、先に挙げた読売新聞よりも「鮮明」だった。「景気・物価高対策」を挙げた人は49%と、「基地問題」を挙げた17%の2倍以上に上っている。地元紙・琉球新報と沖縄タイムス両紙は、オンラインでも記事を配信しているから、こうした情報を仕入れていけば、ある程度は、沖縄県の空気を窺えるだろう。