高市政権は外国人政策を重要課題と掲げ、国籍取得や永住許可の要件を引き締めている。ジャーナリストの山岡鉄秀さんは「移民政策は、消費税率や補助金のように失敗したら直せばいい、という性質のものではない。それを体現しているのがスウェーデンだ」という――。
一票を投じる手元の背景にスウェーデン国旗
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移民を規制してきた与党陣営が敗北

2026年9月13日に行われたスウェーデン総選挙は、歴史的な接戦となった。

9月19日に選挙管理庁が確定させた結果では、社会民主党を中心とする中道左派4党が349議席中176議席を獲得し、移民規制を推し進めてきた保守派4党は173議席にとどまった。保守派は過半数の175議席にわずか2議席届かず、両陣営の得票差も全国で約5万票にすぎない。移民規制派は、僅差で政権を失ったのである。

移民抑制と治安回復を掲げてきたスウェーデン民主党は得票率を前回から約3ポイント落として17%台にとどまり、議席を73から62へ減らした。同党が閣外から支えてきたクリステション首相は17日に辞意を表明し、ノレーン国会議長は18日、社会民主党のアンデション党首に組閣を託した。中央党が左翼党の入閣を拒むなど新政権の枠組みはなお流動的だが、2022年以来の右派政権が終わることは確実となった。

「移民街」で圧倒的に支持された中道左派

注目すべきは、ストックホルム郊外の移民集住地区リンケビーである。ロイター通信によれば、この地区では中道左派が94%を獲得した。

移民やその家族が、自分たちの滞在や権利の縮小を訴える政党に反対票を投じる。それ自体は民主主義社会では当然の行動であり、違法でも陰謀でもない。だからこそ問題は深い。全国の得票差が約5万票という僅差であったことを考えれば、移民集住地区で一方向に固まった票が、国全体の政権選択を左右しうる規模に達していることは明らかだ。

移民政策によってつくられた有権者集団が、次の選挙で移民政策の変更を阻む。こうして一時の政策判断が、将来の政策選択肢そのものを狭めていく。私はこれを「民主主義の不可逆点」と呼びたい。

スウェーデンの入れ替えが一夜で完了した、という単純な話ではない。しかし、人口構成の変化が国家の自己修正能力を奪い始めたことは否定できない。