東大の次期総長に「初の女性」

東京大学の次期総長選びが、大変に揉めています。

東京大学は9月28日、現総長の藤井輝夫さんの後任となる次期総長予定者に、大学院総合文化研究科教授で前理事・副学長の藤垣裕子さんを選出したと発表しました。文部科学大臣の任命を経て、2027年4月に第32代総長に就任し、任期は6年です。

東京大学、藤垣裕子次期総長予定者の記者会見。=2026年9月29日、都内
写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ
東京大学、藤垣裕子次期総長予定者の記者会見。=2026年9月29日、都内

とはいえ、現在大変騒がれ問題になっているのは、その選び方です。

私は、以前は東京大学政策ビジョン研究センターで、現在は情報法制研究所で長らく社会保障や情報法、各種政策を研究している者として、可能な限り公平に、実体験に基づいて本件問題について解説し、どうしたら解決できそうかという説明をしたいと思います。

最大の問題になったのは「意向投票の結果」です。9月28日、教職員らによる意向投票の結果発表が行われましたが、執行役・副学長の染谷隆夫さんが、上位3人で争った2回目の投票で1107票、得票率51.0%と過半数を集めました。

ところが同日午後、学内外の委員16人でつくる総長選考・監察会議(以下、選考会議)は、553票で2位だった大学院総合文化研究科教授の藤垣裕子さんを次期総長予定者に選びました。東大で女性が総長になるのは初めてで、意向投票で1位でなかった人が選ばれるのも、東京大学で総長選挙の制度ができて以来、初めてとみられます。

「何のための投票か」批判が噴出

選考会議議長の国谷裕子さんは記者会見で、意向投票はあくまで選考資料の一つだと説明しました。それはそうですね。そのうえで、科学技術を社会に伝えるコミュニケーション力で学術への信頼を回復する意志と能力、文理融合や国際経験、そして「壁を所与と考えない力」を評価したと述べています。

もっとも、ダブルスコアをひっくり返した理由としては抽象的に過ぎるということで、ネットでは「何のための投票か」とか「女子枠総長ではないか」などといった批判が噴出しました。

文部科学大臣・関芳弘さんまでが、なぜそのような判断をしたのか学内にしっかり説明する必要がある、と大臣記者会見で釘を刺す事態になっています。

この件では、意向投票の結果こそが大学の自治であり、民主的なリーダーの決め方なのだ、という前提で語られることがよくあります。

ただ、2004年の国立大学法人化のときからそうですが、大学の総長・学長を教員から一部の事務幹部に至るまで一人一票で民主的に決めるというのは、そもそも「やめましょう」という方向で、大学運営に関する制度が組み替えられてきました。