選考プロセスを透明化すべきか
藤垣裕子さんなら染谷隆夫さんより経営できそうだ、と選考会議が判断した(または、染谷さんは総長として不適切だったと判断した)という話なので、然るべき説明をしなさい、という話にはなりやすいです。
ただし、選考会議が各候補を吟味するのに、この人は経営できそうだから良いとか、女性だからとか、過去にガバナンス上の問題を起こしたからとか、そういう候補者個人の資質や経歴に関わる内容をオープンにして議論するというのは原則として不適切です。
民主主義的に決める話なら選考プロセスを透明化しろという話になりますが、ここで、選考会議で「どういう議論があったのか」までは言えても「具体的にどの候補にどういう利点や問題があったか」などを明らかにする必要は本来ありません。
さて、冒頭にも書きました通り、私は情報法制研究所や旧東京大学政策ビジョン研究センターで長らく社会保障や情報法を研究してきた者として、教養学部や情報学環とは8年越しでご一緒してきました。あらかじめお断りしておくと、今回の件で私はまったくの部外者ではありません。
染谷氏が“ダメだった”最大の理由
そして、あくまで個人の立場で仄聞する限りで申し上げれば、選考会議で東京大学総長は染谷さんでは駄目だと判断された最大の理由は、工学系研究科と一体で運営されてきた一般財団法人「総合研究奨励会(以下、奨励会)」をめぐるガバナンス不全の問題であろうと思われます。
奨励会では、元事務局長だったH先生が2016年から10年にわたり、自らが代表を務める別法人に再委託費の名目で計約9000万円を流していたことが、今年7月に公表されました。奨励会は工学系研究科長が慣例で代表理事を務める仕組みで、染谷さんも研究科長だった2020年からの3年間、代表理事の立場にありました。
9月11日に東京大学が出した報告は、役職に就けば自動的に理事になる慣行や、事務局長1人への権限集中を「構造問題」と位置づけ、奨励会は今年度末をめどに解散することになってしまいました。
私どもの情報法制研究所も、この件では何度か「事情」を聞かれました。奨励会の元事務局長であるH先生を、弊所の理事としてお招きしていたからです。私どもとしても事情を聞かれて説明したり、クソ忙しいなか状況を説明する資料を泣きながら書いたりしました。

