門前の小僧

私が茶道を習い始めたきっかけは、娘のすすめでした。娘いわく、「パパは物事をしっかり順序立てて進めるのが好きなタイプ」。だから茶道に向いている、と言われたのです。当時の私は腰を痛めて大好きなゴルフに行くことができず、何か新たな趣味を探していました。そこで、娘も通っていた奈蔵先生ご夫妻の教室に行ってみることにしたのです。

今井 正、奈蔵 宗功、奈蔵 宗泉、東京・港区のお稽古場写真
撮影=遠藤 素子
東京・港区のお稽古場にて。

お稽古では二度、点前坐てまえざに座り、2人の先生に一度ずつご指導いただきます。その合間には客座へ移って、先生方が一服点たててくださいます。仕事で頭がクシャクシャになっていても、この時だけはすべて忘れてお茶に没頭できる、貴重なひとときです。

ここでは、ただお作法を覚えるだけではなく、日本のさまざまな伝統文化に触れることができます。たとえば、掛軸にしたためられた禅の言葉の意味を教わる。季節の生花を愛めでる。漆器や竹細工など、お道具について学ぶ――。茶道の師範といえば厳しいイメージがありましたが、おふたりとも本当に気さくで、どんな質問にも優しく答えてくださいます。3人での会話が弾み、いつのまにか私が好きな温泉の話や、戦国武将の話になっていることも。このお茶室で学んでいると、すべてのお作法、そして日本の伝統文化の根底には「おもてなしの心」があることを身にしみて感じます。

習い始めて4年以上経ちましたが、私は門下生どころか、まだ門前の小僧です。今は薄茶しか点てられませんが、次は濃茶を練れるようになりたいですね。(今井)

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2026年10月30日号)の一部を再編集したものです。

(構成=神前 梨理子(本誌編集部) 撮影=遠藤 素子)

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