評価された「最速の調達」

加えて、新型FFMは現に日本で進行中のプロジェクトであり、調達速度の面でも有利に働いた。

豪防衛産業誌『オーストラリア・ディフェンス・マガジン』は、1番艦を2029年に引き渡し、2030年に就役させるという政府の日程を満たす唯一の選択肢だったと指摘する。現行の「もがみ」型護衛艦は年に約2隻のペースで建造されており、艦を早く必要とするオーストラリアには重要な点だ。

さらに、戦闘管理システムの言語対応と豪州法令上の必要変更を除いて設計に手を加えない「ノーチェンジ」方針を採ることで、早期取得を確実なものにしている。

コンロイ国防産業相は、「平時の豪海軍としては最速の調達だ」と評価し、性能面でも新型FFMは世界最高水準の汎用フリゲートの一つであると述べている。

米国防専門グローバル誌のディフェンス・ニューズによれば、基準排水量4800トン級の最初の3隻は日本で建造され、残る8隻は西オーストラリアでの建造となる。1隻目の引き渡しは2029年12月を予定している。

選定時に約100億豪ドルとされた事業費は、2026年4月時点で最大200億豪ドル(約2兆2800億円)と、およそ倍に膨らんでいる。

出発点は岸田政権下の「安保3文書」

なぜ、縮小が続いていた日本の防衛産業が、輸出産業へと変わり始めたのか。出発点は2022年12月、日本政府が閣議決定した安保3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)にある。

米議会設立シンクタンクの平和研究所が取りあげているように、日本の新たな国家安全保障戦略は、中国に関する記述を大幅に拡充。中国の対外姿勢が日本の平和と安全、国際社会の安定、法の支配に基づく国際秩序にとって、「これまでにない最大の戦略的な挑戦」であると言及している。

これと並んで、ミサイル関連技術の開発を急速に進める北朝鮮についても、「従来にも増して重大かつ差し迫った脅威」と強い危機感を示している。従来の抑制的なトーンを大きく超え、情勢の厳しさを強調する内容だ。

日本が「最大の戦略的な挑戦」と位置づけた中国について、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)も見方を一にする。東シナ海・南シナ海でその後も、軍事的な威圧を強め続けているとの分析だ。

なお、中国の軍事的台頭のほか、ロシアのウクライナ侵攻も大きく影響していると、米シンクタンクのスティムソン・センターは指摘する。

こうして防衛の必要性への認識が高まったことで、防衛費は増額へ傾いた。国家安全保障戦略には防衛費をGDP比2%へ倍増させる計画が盛り込まれ、高市早苗政権は達成時期を2027年度から2025年度に前倒しした。