中国の威圧が防衛力強化につながった皮肉
市場はこの流れを好感している。
CNBCによれば、高市早苗政権が掲げる防衛強化路線への期待から、2025年の1年間で三菱重工業の株価は72.7%高、川崎重工業は42.6%高を記録。IHIにいたっては107.1%高と、2倍以上に跳ね上がった。
かつて「事業としては魅力がない」と言われた防衛分野に今、投資家の資金が集中している。輸出解禁が正式に決まる前から、市場は政策転換の可能性を織り込んでいたことになる。
一連の流れを振り返れば、海上での威嚇行為などで日本を含む諸外国へ圧力をかける中国の動向が、結果として日本の防衛力を強化する結果を招いたことになる。
日本が防衛力強化に踏み切った主たる背景は、2022年末に改定された安保三文書で「最大の戦略的挑戦」と位置づけた、中国の長年にわたる軍事的台頭だった。
その危機感を背景に、日本政府は防衛費の倍増を決め、国内調達の拡大に踏み切った。利益率を引き上げて企業をつなぎ留め、輸出の解禁によって海外への販路も開いた。利益率の低さから100社超が撤退し、政府だけを顧客に細々と続いてきた産業に、量産と成長の道筋がようやく示された。
中国の軍拡により、対抗手段として防衛産業への注目が高まり、日本の防衛関連企業自身も利益の薄さから見限りかけていた産業に、再生の光が差した構図だ。
輸出する新型FFMはまだ1隻も完成せず
今後の課題となるのが、製造能力の強化だ。
米シンクタンクのハドソン研究所によれば、三菱重工業は既に4年分の受注残を抱える。働き方改革と人手不足で日本の造船能力はむしろ低下しており、新造艦の建造期間は長期化しているとの指摘だ。
しかも、オーストラリアへ輸出する新型FFMは、海上自衛隊向けにも調達が進む段階であり、現実にはまだ1隻も完成していない。海自向けとオーストラリア向けの建造を同時に進めなければならず、一方で8隻の現地建造を担うオーストラリア側の造船業も、慢性的な人手不足と納期遅延に苛まれる。三菱重工業自身も海外での建造経験がなく、現地の生産体制をゼロから築く必要がある。
CNBCの取材に応じた国際基督教大学のスティーブン・ナギ教授は、日本のエンジニアリングを、「一級品」と評価しつつも、日本企業には国際的なマーケティング経験とコスト競争力が乏しいと指摘した。当面は、「世界の武器市場を席巻するのではなく、信頼できる同盟国を相手に、専門性の高いハイテクのニッチを切り開いていく」形になるとの見方を示している。
半世紀にわたりほぼ国内市場に限定されてきた日本の防衛産業は、国際市場で通用するのか。オーストラリアとの契約の履行に、生産能力は耐えられるのか。戦後初となる護衛艦の輸出を通じ、再建途上にある日本の防衛産業が国際的な競争力を証明できるかが試されている。


