「話題のビジネス書よりも、古典を読むほうが偉い」――そうやって無意識に優劣をつけていないだろうか。平成生まれの美学者・難波優輝さんは、「そもそも、本を読むことってそんなに偉いのか」と問いかける。読書をしているとき、私たちは何を体験しているのか。本書では、マンガや雑誌、楽譜、レシピ本などさまざまな「本」を題材に“読書の哲学”が繰り広げられる。
難波さんが紹介するのは、「読書とは、本を使って、自分に対する〈パフォーマンス〉をすること」という考え方だ。
たとえば難しい人文書を読むことが楽しいのは、「複雑なパズルを解くようなパフォーマンス」だからだという。
「少しはわかるけれど、違うなと思う部分もあって、読み進めればまたちょっとわかる。そうやって信じたり疑ったりするパフォーマンスがちょうどいい。自分自身の凝り固まった考え方から自由でいられるという利点もあります」
そんな読書とは真逆の位置に、マンガがある。最大の特徴は、「読む人の注意をコントロールする」ことだ。マンガでは、次にどのセリフを読み、どんなシーンを想像するかを作者が巧みにナビゲーションする。マンガがこれほど売れるのは、現代人の読書パフォーマンスのクセとも関係があるようだ。
「ショート動画もそうですが、今は“こうやって味わうものだ”とガイドしてくれるコンテンツが流行っています。これも人間の感性のトレンドの一つ。50年も経てば、むしろみんな難しい本が好き、という時代が来るかもしれません」
一方で、「面倒くさくて本が読めない」「活字は苦手」という人も多い現代。
「もっと本が読めるようになりたい人は、本を読んで自分がどうなりたいのかを見極めたらいいと思います。情報は、本からでなくても得られる。全部読み通せない人は、AIの助けを借りてもいい」
読書には「もちろん弊害もある」という難波さん。
「たとえば、本の中の整った世界を基準に現実を評価してしまうことも。その功罪は考えたほうがいい」
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