食事中にムセる、錠剤が飲み込みにくい、たんが増えた。それは加齢でノドの機能が衰えている「のどフレイル」のサインかもしれない。耳鼻咽喉科頭頸部外科医師・西山耕一郎さんと長崎大学大学院教授・熊井良彦さんの著書『長生きのど習慣 健康寿命はのどで決まる』(日本文芸社)から、ノドが招く病気とその兆候を解説する――。

※本稿は西山耕一郎、熊井良彦『長生きのど習慣 健康寿命はのどで決まる』(日本文芸社)の一部を再編集したものです。

嚥下障害を有する高齢者
写真=iStock.com/kazuma seki
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ヒトはなぜ、ムセるのか

食べ物や飲み物を飲み込んだ瞬間にゴホゴホと、年齢を重ねるごとにムセることが増えたなあと感じている人も多いでしょう。なぜムセるのか、その原因の1つは、ノドの機能の衰えです。

ノドには、食べ物を胃に送る食道と、空気を肺に送る気管があります。その分岐点にあるノドには「喉頭蓋こうとうがい」という防波堤があり、食べ物を飲み込むと、防波堤は喉頭をふさいで食道を開きます。こうして食べ物は食道から胃に運ばれ、肺に入ることはありません。

しかし、この防波堤の働きが衰えると、食べ物が喉頭に誤って入り、声帯を通り気管に入ってしまうことがあり、ムセて咳が出ます。咳で食べ物が気管から排出されれば問題ないのですが、誤って気管を通って肺に入ると炎症を起こしてしまいます。

これは「誤嚥性気管支炎」「誤嚥性肺炎」と呼ばれ、命にかかわる事態を招きます。加齢によってノドの機能が弱まると、ムセることができなくなり、誤嚥性肺炎、誤嚥性気管支炎のリスクが高まります。

ノドの力は「喉頭挙上筋群こうとうきょじょうきんぐん」という、ノド周辺の筋肉が支えています。50歳代以降にこの筋肉が衰え始め、60歳代には衰えのスピードが加速。ノドを鍛えることは長生きの重要なポイント。まずはノドの仕組みと誤嚥性肺炎を知ることから始めましょう。

【図表1】ノドが衰えると肺炎になる?
食事中に咳が出る。食事中に痰が出る。出典=『長生きのど習慣 健康寿命はのどで決まる』(日本文芸社)

自覚ないまま進行する危険な病

ノドの力が衰えてきていることは、外側から見てもわかる場合があります。確認したいのは、ノド仏の位置です。ノド仏は喉頭挙上筋群が支えていますが、筋力が衰えるとノド仏が徐々に首の下のほうに落ちてきます(あまり目立ちませんが女性にもノド仏はあります)。

グラフで示したのは、年齢ごとのノド仏の位置です(図表2)。30歳代から下がり始め、50〜60歳代では急激に下がります。そう、ノドの筋力と反射運動は気づかないうちに少しずつ衰えているのです。

【図表2】ノド仏が下がってきたら注意

「そう言えば50歳頃からムセることが増えたなあ」と感じていませんか? 実は、このときにわずかに誤嚥をしている可能性があります。体力も筋力もキープできているこの年頃は、ムセることで喉頭から気管に入った食べ物を排出できますが、完全に取り除くことができず、少量の食べ物が肺に入っていることも考えられるのです。