年を重ねても意欲的で、柔軟な思考を持つにはどうすればいいか。医師の和田秀樹さんは「前頭葉が衰えると知能テストの点は1点も落ちないが、思考の自由が奪われ、つい前例踏襲の思考パターンになってしまう。日本人には多いタイプだが、この機能が衰える前に思考の解放を行う必要がある」という――。
※本稿は、和田秀樹『脳が若返る思考の自由』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
意欲を司り感情をコントロールする脳の部位
歳をとるほど思考の自由が奪われてしまう、というのは、脳の前頭葉という場所が老化、萎縮するからです。
実は脳の中でいちばん最初に萎縮が目立つのが、前頭葉なのです。
前頭葉というのは、長い間、何を行う場なのかがよくわかっていませんでした。
20世紀の初頭に行われたロボトミーという、統合失調症の患者さんの治療を目的とした手術が、期せずして前頭葉の機能を明らかにしてくれました。
興奮の強い統合失調症の患者さんの前頭葉の一部を切り取ると、患者さんは大人しくなるのに、知能テストの点数が1点も落ちないのです。言語機能は側頭葉が司るし、計算や図形の処理は頭頂葉が司るので、知能に影響が及ばなかったのです。
ところが、この手術を受けた人たちが昼行灯のような状態になり、意欲が大幅に低下し、それでいて怒りだすと止まらないというように感情のコントロールが悪くなったのです。
上の例からも前頭葉は意欲の源泉であり、感情のコントロールを司ることが明らかになりました。
また前頭葉の脳出血や脳腫瘍で、保続という現象が見られます。
たとえば、今日が何月何日ですかという問いに正確に答えられるということは記憶障害はほとんどなく、見当識も保たれていることになります。
ところが前頭葉に障害がある人は、生年月日を問われても同じ答えをしてしまいます。
問いが変わっても対応できないのです。

