家は奪い合うように見えて実際に奪い合うのは現金

遺言があっても争いになる典型が、遺留分を巡る不満です。遺留分は遺言によっても奪えません。妻と子2人が相続人なら、子1人あたりの遺留分は遺産全体の8分の1です。遺言に「財産のすべてを長男に」とあっても、ほかの子は自分の取り分が8分の1に足りなければ、不足分を請求できます。しかも、遺留分の請求は金銭での支払いを求める「遺留分侵害額請求権」です。争いの焦点は「誰が何を相続するか」ではなく「不足分をいくら払うか」に移るのです。

長男が家屋や家業を継ぐことに異議が出ることは少ないものの、遺留分を巡って「お兄さんは実家と商売を継ぐのに、自分の取り分が少なすぎる」といった訴えがなされるケースはあります。長男に十分な現金があればよいのですが、手元になければ、どう用意するかが次の問題になります。

そこで使われるのが、土地建物を相続した人が自分の現金で差額を支払う「代償分割」という方法です。ただ、実家や家業を継ぐような家庭でも、兄弟姉妹に配れるほどの現金を手元に持っているケースは、多くありません。

(構成=渡辺一朗)