×ざっと流し読み ○情景を思い描いて音読
身体と思考をフルに働かせる読み方
読書は、右脳と左脳の両方を活性化させる最高の脳のトレーニングです。とくに私がおすすめしたいのが、音読です。
音読は文字を目で追う視覚の働きに加えて口を動かす部位(運動野)、聞く部位(聴覚野)と、脳内の複数の部位をより大きく刺激します。
もちろん大抵の場合、黙読でも文章の意味を理解する処理は音読と同様に行います。黙読でも運動野や聴覚野の働きがゼロというわけではありませんが、実際に発声して声を聞き、その音と意味を結びつける音読のほうがより活性化するのです。
音読では、声を出して抑揚やイントネーションを調節する認知機能を使いながら、内容も同時に理解します。そのため、黙読よりも多くの認知負荷がかかります。また、文の大意をつかむだけでなく、映像を思い描くことにもつながります。声に出すという負荷が、結果として脳の身体機能をつかさどる部位も使うだけでなく、脳の注意の制御や実行機能など広い部分の活性化を促します。まるごと一冊を音読する必要はなく、一段落だけでも構いません。気になった箇所を声に出して読んでみてください。
脳を刺激する要素は「声を出す」以外にもあります。紙の本で読むか、電子書籍を読むかによっても、脳の使う範囲が変わってきます。ノルウェー・スタヴァンゲル大学で、平均24歳の50人を対象に行った研究によると、とある小説を紙の本と電子書籍で読んだグループにそれぞれ分けたところ、物語の出来事を正しい時系列でより正確に回答できたのは、紙の本で読んだグループでした。
紙の本には厚みという手がかりがあり、読み始めと読み終わりでは、右手と左手にかかる紙の厚みが違いますよね。つまり紙で読むと、脳内では言葉を扱う部位だけでなく、手の感覚といった身体的な感覚をつかさどる部位まで一緒に働きます。電子に比べて脳内で働く範囲が広く、記憶にも残りやすい効果が期待できます。
本を読んでいるときに意味がわからない単語やフレーズが出てきても、なるべく検索せずに、過去の記憶から連想したり、前後の文脈から推測したりすることで、その情報の記憶の定着を促進する効果があります。
わからないことについていったん過去の記憶を遡ろうとするのは、脳にとっては大事なことです。2011年にコロンビア大学で実証された研究で、「グーグル効果」と呼ばれる現象があります。ネットで検索すればすぐに疑問が解決するという先入観により、脳が記憶を怠るようになる――つまり、覚える働きを、脳の外側にある道具に肩代わりさせている状態を指します。
この延長線上にあるのがAIです。情報を入れてアウトプットさせる道具ですから、判断や文章をまるごと任せると、そのぶん脳を使わなくなるため、老化が加速します。
私が脳への影響で特に懸念していることが2つあります。一つは、批判的に考える力が働かなくなること。AIの答えは、それらしく見えて間違っていることが少なくありません。もう一つは、返ってきた言葉を自分の言葉のように感じてしまうことです。問いを立てて答えが返ると考えた気になってしまいます。
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