長く健康でいるために必要なものは何か。東北大学名誉教授の虫明元氏は「特定の疾患がないのに、脳卒中の発症率が32%、糖尿病の罹患率が14%上昇するなどのリスクがある状態がある。この状態から早く脱することが重要だ」という――。

※本稿は、虫明 元『孤独脳 脳のSOSに気づき心と体を壊さない30の方法』(ディスカヴァー携書)の一部を再編集したものです。

寝室のベッドで起き上がっている男
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WHOが「健康を害する要因」だと言及したもの

2025年6月30日、WHO(世界保健機関)は、あるひとつの画期的なグローバルレポートを発表しました。そのタイトルは、『孤独から社会的なつながりへ(From loneliness to social connection)』。

WHOがこのようなレポートを発表したのは、孤立・孤独が、さまざまな身体および精神的疾患への罹患リスクや悪化要因となり、早期死亡(75歳未満の死亡)にもつながることなどに関し、すでに多数の科学的エビデンスが得られているという背景があります。

これまで「健康の社会的側面」は軽視される傾向にありました。しかし社会的孤立・孤独は単なる個人の問題ではなく、タバコや過度の飲酒に匹敵する「重大な公衆衛生上の脅威」であり、社会全体にも悪影響を及ぼします。こうした見解から、WHOはこれを喫緊の課題ととらえ、2024年に孤独・孤立対策の委員会「社会的つながり委員会」を立ち上げ、本レポートの発表に至りました。

本レポートでは、孤独感には世界人口の15.8%、すなわち約6人に1人が悩まされていることが報告され、ソーシャルメディアの過剰使用などの背景により、若年層でも高い割合で社会的孤立や孤独を感じていることが指摘されています。

脳卒中の発症リスクが約32%上がる

また、孤独感によって、心臓病や脳卒中、糖尿病、認知症、うつ病、不安症などの発症リスクが上昇するなど心身の健康に重大なリスクをもたらすことが明らかにされています。WHOのレポートによれば、脳卒中の発症リスクは社会的孤立により約32%上昇することが示されています。

また、同じくWHOのレポートで紹介されているデンマークの大規模研究(46万5千人超を対象に6年間追跡)では、ときどき孤独を感じる人で糖尿病の罹患リスクが14%、頻繁に孤独を感じる人では24%上昇することが報告されています。

ちなみに、アメリカの公衆衛生局長官は2023年の勧告の中で、孤独による早期死亡リスクの高まりを「1日15本のタバコを吸うのと同じレベル」と表現しており、この問題の深刻さを象徴する言葉として広く知られています。

さらに地域社会に目を向けると、孤立・孤独は社会的な結束を弱め、生産性の低下や医療費の増加など、数十億ドルもの損失をもたらすとされています。

一方で、良好な社会的つながり(ソーシャルサポート)をもつことは、寿命を延ばし、「ウェルビーイング(well-being)」を劇的に向上させることが実証されているとしています。

社会的な絆を強くもつ地域社会は、より安全で健康的であり、災害への対応を含め高い回復力を有する傾向があります。