米国に反発し、欧州に近づくカナダ
2025年にドナルド・トランプ大統領が再登板して以降、アメリカとカナダの対立が深まっている。トランプ大統領はカナダをアメリカの属国であるかのように主張しているのだから、両国の対立が深まるのは当然だ。ナショナリズムを掲げる国の政権から圧力を受ければ、当然のように圧力を受けた側の国でも、ナショナリズムが高揚する。
カナダのマーク・カーニー首相は、欧州連合(EU)などヨーロッパ勢と反トランプで強調する姿勢を強めている。9月17日、カーニー首相は、フランスのストラスブールにある欧州議会で、カナダとEUとの関係の深化を目指したい旨の演説を行った。その念頭に傍若無人な振る舞いで圧力を強めるトランプ政権があったことは明らかだ。
その前日の16日、EUの欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は、カナダをEUの準加盟国として迎える道を開きたいとの旨を欧州議会での所信表明演説で表明している。もっとも、準加盟国が何を意味するのか不明だし、EUの指導者の中では不協和音も生じたようだ。カーニー首相へのリップサービスというところだろう。
カナダとアメリカの対立はアメリカが一方的に仕掛けたものだから、カナダ側が不快感を示すのは当然だ。敵の敵は味方の理屈で、カナダがヨーロッパ勢に接近するのも無理ない話である。直接この問題に関係しない日本にとっては余所事であるから、冷静かつ冷淡に事態の推移を見守るだけである、というわけには、問屋が卸さないようだ。
石油輸出国アメリカの意外な盲点
なぜならば、カナダとアメリカの対立が深まれば、それがアメリカのエネルギー需給の悪化をもたらし、言わば玉突きの形で、アメリカから日本に輸出されているエネルギーの輸出の減少につながりかねない側面があるためだ。多少、入り組んだ話だが、日本が悪影響を被るリスクを持つという視点から論じると、問題の解像度が引き上がる。
2000年代に、いわゆるシェール層(頁岩層)の開発が進んだことで、アメリカは世界最大の原油生産国となった。その結果、アメリカの石油収支は2020年に黒字に転換し、2021年はいったん赤字に戻ったが、その後2025年まで黒字を拡大させている(図表1)。アメリカは石油の純輸出国となったわけだが、ここに実は盲点がある。


