消去法的に残った手段は、石油製品の輸出を抑制することだ。アメリカのディーゼル(軽油)の全米平均価格は、2026年9月下旬時点で1ガロンあたり約6.50〜6.54ドル(約1000〜1020円前後)と冬を前にして過去最高水準を記録している。輸出に回す分があるなら国内で回すというロジックである。対イラン戦争が勃発して以降、日本などアジア市場の各国はアメリカ産の石油製品への依存度を高めている。ゆえに、アメリカが石油製品の輸出を手控える事態となれば、アジア市場での石油製品価格の高騰は免れない。
カナダとアメリカの対立は、表面的には、トランプ政権がまき散らしたノイズの中でも局所的な性格が強いものだ。しかし実態としては、日本を含めた東アジアを中心とするグローバルなエネルギーインフレを加速させるリスクを持っているのである。ただの対岸の火事だとして、事態の推移をひとごとだと一蹴できる立場に日本はいないのだ。
日本はガソリン補助金でしのげるのか
戦略備蓄が尽きるとまではいかないまでも、それが意識されるほどの減少が生じた場合、さすがにトランプ政権も対イラン戦争を継続することは難しくなると考えるのが自然である。しかし、そうした冷静な判断ができるなら、そもそも対イラン戦争を仕掛けることはなかっただろうとも考えられる。不確実性の塊、それがトランプ政権である。
イランとしては、11月の中間選挙が一つの節目となる。トランプ大統領が所属する共和党を大敗に追い込んだ後、政権のレームダック化が明確になったタイミングで停戦協議に応じるのではないだろうか。ただし共和党の大敗を受けても、トランプ政権が態度を軟化させるか定かではない。むしろ、態度を一段と硬化させる可能性さえある。
そうなると、カナダとアメリカの対立に端を発したエネルギーインフレの加速というシナリオも現実味を帯びてくる。その時、日本はどうするのか。急騰するガソリン価格を、これまで同様に補助金の支出で打ち消すのか。それは財政の悪化要因であり、円安要因となる。円安が進めば、当然ながら原油や石油製品の輸入コストは膨らむ。
インフレが加速すれば日銀も利上げを加速せざるを得ない。一方、高市政権は利上げを好まないのだから、一段の円安を覚悟でガソリン補助金を出すのかもしれない。しかしそれで円安が進めば、結局はアメリカによるさらなる政策干渉を招くだろう。すでにアメリカから強くクギを刺された以上、利上げ加速以外の余地は狭まっている。
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