「自己実現欲求が満たされるか」が重要
フラリッシュの考え方は、マズローの「欲求5段階説」とも重なります。人間には生理的・安全・社会的欲求の上に「自己実現欲求」があり、それこそがその人固有の、かけがえのない欲求です。
「自己実現欲求」が満たされるかどうかは、社会的なウェルビーイングにとって重要な要素です。
たとえば「誰がやっても同じ」「誰にでもできる」仕事の中では、一人ひとりの個性や独自性はなかなか認められません。全員に同じ“ユニフォーム”を着せるような環境では、自己実現とは程遠い状況に置かれやすくなります。
このような環境では、周囲に人がいても「一人の人間として見てもらえていない」という孤独感が生まれやすくなります。そのような「孤立していないのに孤独」という状況は、社会生活ではよくあることです。
そしてこの社会的なつながりの質が損なわれると、心理的・身体的な健康にも影響が及んでいくのです。
ウェルビーイングを生む「自己認識」
ウェルビーイングやフラリッシュは、脳の神経ネットワークの働きと深く関わっています。具体的には、心理的・社会的・身体的な健康それぞれに対応する3つの「自己認識」に関わる神経基盤です。
①心理的自己(社会的・内省的自己)
関連する部位・ネットワーク:内側皮質系(前部前頭前皮質、内側前頭前皮質、背内側前頭前皮質、上前部前頭前皮質、後部前頭前皮質、および前頭前皮質)や、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)が深く関与。
社会的認知に関与する領域と機能的に関連、自己と他者に関連する処理をつなぎ、内省・他者理解・アイデンティティの形成を担う。健全に機能しているときは、他者と関係を築き、社会的なつながりや自己肯定感を維持する土台にもなる。
性格・記憶・他者との関係性などをもとに「自分とは何者か=アイデンティティ」を形成する領域です。他者の意図を読み取ったり、自分を客観的に見つめ直したりする働きも担っています。

