インド初の高速鉄道が、西部のムンバイ―アーメダバード間で建設されている。日本の新幹線方式を採用し、当初事業費の約81%を年利0.1%・返済50年の円借款で賄う計画だ。ところが、信号には欧州規格が採用され、日本製車両の導入も不透明になっている。なぜ日本の資金と技術を利用しながら、日本と距離を置くのか。海外メディアがインドの思惑に注目している――。
2017年9月14日、グジャラート州アーメダバードで行われたムンバイ・アーメダバード高速鉄道プロジェクトの起工式に出席した、インドのナレンドラ・モディ首相と日本の安倍晋三首相
2017年9月14日、グジャラート州アーメダバードで行われたムンバイ・アーメダバード高速鉄道プロジェクトの起工式に出席した、インドのナレンドラ・モディ首相と日本の安倍晋三首相(写真=GODL-India/Wikimedia Commons

日本と組んだインド高速鉄道の現在地

インド西部、国内最大の都市・ムンバイと商都アーメダバードの間で、同国初の高速鉄道の建設が進んでいる。

マハラシュトラ州とグジャラート州にまたがる全長約508キロの路線は、東海道新幹線の東京―大阪間とほぼ同じ距離だ。インド高速鉄道公社(NHSRCL)によると、最高時速320キロで12の駅を結ぶ計画だ。現在は両都市間の移動に特急列車で約7時間かかるが、完成すれば主要駅3駅に停車する便で最短約2時間7分と、大幅な短縮を見込む。

いま、グジャラート州の平原には真新しい高架橋が延び、架線を支える鉄柱が立ち並び始めた。ムンバイ近郊では、インド初の海底トンネルも掘り進められている。

インド鉄道省によると、2025年11月末までに約8580億ルピー(約1兆4200億円)が投じられ、工事の進捗率は55.6%に達した。インド英字日刊紙のデカン・ヘラルドによれば、路線の中ほどに位置する先行区間であるスーラト―バピ間の約100キロは、2027年8月15日の独立記念日に開業する予定だ。

日印両国がこの路線の建設に合意したのは、2015年のことだ。ただし、その後の経緯で車両と信号システムは日本の手を離れつつある。国際鉄道業界専門誌のインターナショナル・レイルウェイ・ジャーナルによると、インド政府は2024年、高速車両を国内で製造し、信号は国際標準の方式を採用することを決めた。

それでもこの路線には、土木、軌道、電化、資金、人材育成に至るまで、日本が深く関与している。日本をパートナーに選んだインドは、高速鉄道事業で成功できるか。迷走するインドネシア高速鉄道との違いが鍵になる。

「時限爆弾」を抱えたインドネシア

インド洋を挟んで東に位置するインドネシアは、「安くて速い」と見られた中国をパートナーに選んだ。その後、計画は遅れ、利用も想定を大きく下回り、「時限爆弾」と呼ばれるまで事業は行き詰まっている。

一方、インドは駅の設置方式、資金調達、現地への技術移転の3点で、インドネシアと異なる道を歩むと予想される。両国で分かれた選択を、まず駅の立地による利用率の違いから見てみよう。

中国を選んだインドネシアが開業させた高速鉄道「Whoosh(ウーシュ)」は、首都ジャカルタと学園都市バンドン間の約140キロを結ぶ。同路線では今、運営会社が中国からの巨額の借り入れに苦しんでいる。

アジア専門英字ニュースサイトのアジア・センティネルによると、債務は116兆インドネシアルピア(約1兆400億円)に膨らみ、インドネシア国鉄トップは国会で「時限爆弾だ」と言い切った。利用率は想定ほど伸びず、収益体質の改善は容易に期待できない。

開業を約2カ月後に控えた2023年8月、バンドン在住の写真家はカタール国営衛星テレビ局のアルジャジーラの取材に、駅が市中心部から1時間も離れていて多くの人には遠すぎると語り、自分は普通列車を使うと述べた。