日本の0.1%と中国の2%、桁違いの金利差

インドネシアとの差異を生む2つ目の鍵は、カネである。正確には、誰から、どんな条件で借りたかだ。ここにこそ、インドとインドネシアの明暗を分けた最大の理由がある。

インド高速鉄道の総事業費は、当初の見積もりで約1兆800億ルピー(約1兆7900億円)。NHSRCLによると、このうち約81%を、JICAの円借款で賄う。円借款とは、政府開発援助(ODA)の一環として供与される超低利の融資だ。金利はわずか年0.1%。返済期間は50年に及び、最初の15年は元本の返済が猶予される。

これと対極にあるのが、Whooshで中国側が提示した条件である。アジア・センティネルによると、Whooshの事業費は当初の約60億2000万ドル(約9570億円)から約72億2000万ドル(約1兆1500億円)へ膨らんだ。その4分の3にあたる約54億1500万ドル(約8610億円)を、中国国家開発銀行からの融資で賄っている。金利は元本部分が年2%、コスト超過分は年3.4%にのぼる。日本の0.1%とは、文字どおり桁違いだ。

中国​国家開発銀行
中国​国家開発銀行(写真=維基小霸王/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

日本案から中国案に乗り換えた末路

JICAと中国国家開発銀行の金利差は、毎年の返済負担の格差となって国の財政にのしかかる。アジア・センティネルによると、Whooshを運営するインドネシアと中国の国営企業による合弁会社「インドネシア・中国高速鉄道会社(KCIC)」は、年に約1億2090万ドル(約192億円)の利息負担を抱える。インドネシア国鉄(KAI)のボビー・ラシディン社長は国会の公聴会で、「我々は本来黒字化できたはずだが、Whooshの債務のせいで赤字に陥っている」と明言した。香港の英字オンライン紙のアジア・タイムズも、不透明な条件や膨らむコストを挙げ、Whooshを一帯一路構想の問題点を映す事例と位置づけている。

Whooshの建設をめぐっては当初、新幹線の実績を持つ日本に打診があったが、2015年にジョコウィ政権は中国案に乗り換える決断をした。中国案が「インドネシア政府の財政支出・債務保証を求めない」とされた点が決め手のひとつだったが、結果として期待は覆された。アジア・センティネルによると、インドネシア政府はやがてKCICへの資本注入を開始し、2023年9月には当時のスリ・ムルヤニ財務相が署名した規則によって、事業の借入に国が保証を付ける道が開かれた。

一方のインドは、年0.1%という超低利のおかげで、こうした重い返済負担を免れている。円借款は低利かつ長期で、据置期間中は元本を返さなくてよいため、工事が遅れても即座に債務危機に陥る恐れがない。差がついたのは、金利、返済期間、据置期間という融資の条件だった。